zawa

ミッドナイトスワンのzawaのネタバレレビュー・内容・結末

ミッドナイトスワン(2020年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

まとまらなすぎるのでまとめない。
完全に自分ようメモ。



ぐわっと心持ってかれた。。

大学時代は日本でもデンマークでも
ジェンダー論とってたり、
LGBTQに関する映画とかも
たくさんみてきたけど、よく考えたら
こんなに身近な日本の作品は観てきてなかったかも。

あーーーー心がくるしい。
でも、なぎささんやその仲間を
「かわいそう」なんて絶対言いたくない。
でもでも、つらいのは事実で、
血や涙を流してるのも事実。それが現実。
なんでだよ、なんで私だけ…って
いくら言っても言い切れないよね、
そんなの。ほんとになんでだよ。


草彅くんは本当にすごい役者さんだ。
どのシーンもすごいけど印象に残ってるのは
就職して髪を切って見た目がいわゆる
”いつもの草薙くん”になったのに
(ヘアスタイルもバッチリ彼だったのに)
ちゃんとなぎささんだったこと。

心からなぎささんになってなければ
あの目と全身から出る女性性はないと思う。

髪切って「武田健二」になるなんて
絶対嫌なはずだけど、
きっと自由に舞ういちかを見て
自分の想いも託して、もっと
羽ばたいてほしいと思ったんだろうな。

いちかのために自分らしく
なくなってしまうなぎささんを
何もできずに見てるいちかもつらかっただろうけど。。

その子どもながらの無力さとか
勝手に託されるつらさもあるね。
何勝手に自分じゃない
人間生きてるんだよって。

なんであなたがあなたじゃ
いられない世界なんだよって、
私を優先する暇ないくらい
自分で踊ってよ楽しんでよって、
私なら思ってしまう。
もちろんそうしたいのなんて
分かってるからこそ。でもできないから、
誰かが死ななきゃ誰かが生きられない
なんていう仕組みを憎むと思う。





“名前”という、誰にでもある
自分を表す1番身近なアイデンティティを
偽らなければいけなかったり、
「あー、はいはい」とあしらわれるなんて
なんて非人道的だし、おかしいことなんだろう。

「男でもこんな綺麗なんだから」
「オカマなのに」って、、、、
女って言ってんでしょうが!!!と
私の方が怒りそうになった。





あと、りん。
コンクールの時電話かけてたシーン、
最初のカットで最期を察してしまって
あの一連、気が気じゃなかった。

(いちかとのキスから)女の子が好きなのかもというのとや、おそらくそれを言えない環境、「バレエを取ったら何も残らない」という母の本音、表向きには褒められるけど雑に扱われること、、、そしてバレエができなくなったこと。

家庭という社会的組織の中で
非人道的に扱われていたという点では
りんもなぎささんと似た痛みを
抱えていたのかもしれない。

いちかという、自分にはできない程に
自由に舞う彼女に自分の一部を
投影していたりするという点も。

松葉杖でいちかに泣きながら
歩み寄るシーンは素晴らしい演技だったな。

いちかが現れたことで生まれる
彼女の中の嫉妬や優しさや気づきも
すごく繊細に伝えてくれていたと思う。




そして、いちか。
終始誰の声も届かないような、
それくらいに遠いところに心があるような
彼女が唯一ときめいたバレエ。

私も昔、6年間ダンスを習っていたから
その時感じていた解放感や
「あー生きてる!」って感覚を思い出した。
(当時はそんなこと考えずただただ好きでやってたけど)

きっと、あまり喋らないいちかにとって
バレエはなぎささんへの愛情表現だったり
りんとの友情だったり、自分の存在意義だったり色んな意味をもってたんじゃないかな。
本人が自覚あったかどうかは別として。

そのたった1つがあることの
素晴らしさと、それを生きる美しさが
ただただ真剣に、ある意味淡々と
バレエに打ち込むいちかから滲み出てた。
表情をたくさん変えなくても、
全身であんなにも伝わるものなんだ。







最後の海辺でのシーン、
なぎささんが「かわいい」とか
「きれいだわ」って言葉を
言ってたのも印象的だった。

やっぱり、何かに美しさを見出せたり
それを感じたり、言葉にできる、
そんな感性が美しい。

痛む体になったり、
心ない言葉を浴びせられてきても
そんな心をもってるなぎささんの心が美しいと思う。







お願いだからバケモノなんて言わないでほしいし
お願いだから「病院で治してきて」なんて言わないでほしい。
みんなきっと自分自身の中に
マイノリティな部分てある。
それが“たまたま”社会的に
受け入れられてたり、
似た人が多いだけだったりする。


ただ、そういう彼らもただの
悪い人じゃないからこそ、苦しい。
そもそも元から悪い人なんていなくて、
きっと無知か元被害者なだけなのだから。
なぎささんの母親も、りんの家族も。


話は逸れたけど、なぎささんのお母さんが
嫌だって泣きつくシーンは本当に心が痛んだ。
そしてそんな母に対して比較的
落ち着いて応対してるのを見て、
この人が今まで言われてきた
言葉やその数を考えさせられた。




痛々しくて見ていられないシーンもあった。
でも描かれてるよりもっと
多くのことが実際には起きているよね。


私は私で強く自分を生きようと
改めて思ったし、みんなが
そうできる社会をただただ願う。


2020.11.21.
zawa

zawa