北斗星

ミッドナイトスワンの北斗星のネタバレレビュー・内容・結末

ミッドナイトスワン(2020年製作の映画)
4.7

このレビューはネタバレを含みます

イチカがすごく可愛らしかった。顔が小さくて各パーツが全部コンパクト。そして背が高くひょろーっと中学生らしくホッソリしてて。
少女は何も喋らない。かえって存在感が際立つ。

イチカがナギサの前で自傷行為をしたときに、ナギサが必死で抱き締めて制止した。イチカは泣きナギサも哀しむ。

イチカがへこんでいる時も髪の毛を撫でて『ヨシヨシ』ととても優しく慰めてくれた。男より女の気持ちがよく解るのかもしれない。
いや、男や女など関係なく元々人間が優しい人なんだろう。

イチカの同級生の少女は、イチカに無いものをバレエ以外は全て持っているのに、早くに人生に絶望して、やはり自殺してしまう。
そしてバレエ以外何も持っていないイチカの方が逞しく生き残る。

ナギサがバレエの先生から、普通に『お母さん』って呼ばれたとき、すごく嬉しそうに笑っていたシーンが良かった。見ている方もとてもホッコリした。
バレエの先生もナギサに偏見がないようだ。ここに先生の人柄が出ている気がした。

その日からナギサは手料理をイチカに振る舞う。

イチカは田舎に帰って中学を卒業後、母親からちゃんと許可をもらい再びナギサの元へ。

イチカの母親が実家で『女が1人で子供を育てていくのがどれだけ大変かわかるか?!』と怒鳴ってナギサをブッ飛ばす。
そんな母親も都会でたった1人で夜の仕事をしながらイチカを育てていた頃とは違い、卒業式を迎える頃には母親も明るく、落ち着いて見えた。

イチカにとって『お母さん』は、本当の母親とそして数ヵ月一緒に苦楽を共にして暮らしたナギサなのだろう。

イチカの髪型が可愛らしく服装も白っぽい明るい色にシフトしており、ナギサに預けられたときよりノビノビと活動的で友人もできて、よく話すようになっていた。内面の変化が窺える。

最後の方でナギサが癌と手術の後遺症で働けなくなり、それどころか身体が不自由になってしまって他人に血だらけのオムツを取り替えてもらってるような生活をしていた。
とにかく、ナギサが気の毒で気の毒で仕方なかった。性転換手術に失敗してしまうとあんな風になってしまうのか!と物凄く衝撃を受けた。世の中のアンダーグラウンドを見てしまったような気がした。
親や親戚たちにも言えず、人知れず働けなくなったり苦しんで死んでいく人たちは結構多いんだろうか?

ラスト、ナギサの形見のトレンチコートを羽織り外国の地で胸を張ってツカツカと歩いてたイチカ。その姿はナギサと重なる。隣の外国人の女の子と話しているイチカは、赤いリップをつけてとても堂々としていた。

ナギサもイチカのこんな姿を、空の上で誇らしく見ているだろう。
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