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バビロンのYACCOのレビュー・感想・評価

バビロン(2021年製作の映画)
3.5
栄枯盛衰。一栄一落。諸行無常。おごれる人も久しからず、ただ春の夜の夢のごとし。これらはどうやら日本や仏教の世界でのみ起こることではないらしい。それを1920年代のハリウッド黄金時代を舞台に作成すると、ハリウッドに集う強くて美しく、そしてある種愚かにも見える人たちのこんなにクレイジーな狂騒になるのだと思った。

映像は煌びやかだし、とてもパワフルだ。一方で、そのスキャンダラスで過激な演出、性的な描写、下品にも見えるシーンに見る人によっては本作を拒絶し、否定したくなるかもしれない。(海外での評価も興味本位で見てみたが、賛否両論の結果、相対的にはあまりよろしくない評価となっているようだ)
サイレント映画のスターとして生きる、ブラッド・ピット演じるジャック・コンラッド。
サイレント映画の隆盛という追い風を受けるジャックは、まさにその栄華を象徴する登場人物と言えよう。そんなジャックをブラッド・ピットが貫禄たっぷりに演じてくれている。
そんな映画業界に美しさと強かさをもって乗り込んでいくネリー・ラロイをマーゴット・ロビーが演じているのだが、これがまた凄かった。駆け上がっていくネリーにまさに魂を吹き込んだといっても過言ではないと思う。さらにいうと、ラストの方に登場するトビー・マグワイア。正直すごすぎてひいた…(これは誉め言葉です)

このように、映像にも役者たちにも尋常ではない熱量を感じるのだが、見終わった時、大きな徒労感が私を包んだ。勿論、この映画のもつ熱と毒にあてられたところもあるのだと思うが、この煌びやかな狂騒に心身を埋めて楽しむということが、正直なところ私にはいささか難しかったのかもしれない。一方で、この行きすぎたようにも見える世界が当時のハリウッドの姿なのかもしれないとも思う自分もいた。春の夜の夢のごとしというには強すぎるこの夢がハリウッドで見る夢なのか。

「ラ・ラ・ランド」により、アカデミーで評価を得たデミアン・チャゼルの新作映画「バビロン」をハリウッドではどう評価するのかが興味深い。
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