第95回アカデミー賞(2023)3部門ノミネート(作曲賞・美術賞・衣装デザイン賞)も無冠に終わったDamien Chazelle脚本監督作。
1920年代サイレントからトーキーへと移り変わるハリウッドで凋落する三人を中心に映画史の変遷を辿る物語。
何でもありのバーリトゥードよろしく糞とゲロの渦巻く乱痴気騒ぎの3時間に賛否は割れる。
いきなり象のケツ穴…しかも肛門内部から糞が吹き出ていく瞬間のショットを入れ込む悪趣味ぶり。そこからイグアスの滝のように流れ落ちる糞。滝行のように糞を浴び続ける像使い。
カップルだらけでほぼ満席の日曜の昼下がりであったが、"La La Land"よろしく甘酸っぱいものを期待して見に来たカップル達は冒頭で引いてしまったことだろう…いきなりの下品描写に、ざまぁみろと胸のすくような思いをしたのは私だけか…?
前に座ってた若いカップルに特に言いたいのだが…エンドロールに入った瞬間に、男の方がスマホを見ている。そしてその画面を彼女も覗き込み、何やら2人で話している。すぐ終わるかなぁと思ってたが…場内が明るくなるまでずっとスマホの画面は明るく光っていて非常に不快だった。
家に帰るまでが遠足だと子どもの頃に習わなかったのか?
どんどん流れ落ちるクレジットをこちらは必死に追いかけたり、物語を反芻したりする貴重な時間なのに、君のスマホがギラギラ光っていることで阻害されてしまった。
一体何を見てたんだい?
そして彼女も注意しようよ…
終わり良ければすべて良しということを知らんのかね?
最後の最後でイライラしてしまい、その印象が一番強くなってしまった。
中盤くらいにも、前から3列目くらいの大男が明るさMAXだろ?ってくらいの光量でスマホを弄りだして…
TOHO日比谷は割としっかり高低差のある段差があるために、後方からその大男のスマホが目について仕方がない。お前の自宅かよ?ってくらい普通にスマホを見てるから、これにもイライラさせられたけど…
結局、その大男は退席したから良かったけど…
普段は運転しないけど、休みの日にたまに運転する人のことをサンデードライバーと揶揄したりするが…それと同じ現象が映画館でも起こっている。サンデームービー?とでも名付ければいいのか…
年に1〜2度しか映画館に行かないような人たちは鑑賞マナーが悪い傾向がある。
もちろんモラルの問題なので、年に1〜2度しか映画館に行かないから悪いというわけではなく、何十年も車に乗ってるのに煽り運転するようなアホタレもいるのと同じで、よく映画館に行ってる人だからといってマナーがいいわけではないのだが…
にしても日曜日の映画館の客層は、いかんともしがたい。
みんな大好き"La La Land"の監督の新作だし、ブラピだし、マーゴット・ロビーだしね、まぁ人は来るよね…色んな層が集まるような大作だから仕方ないけど。
エンドロールのスマホカップルは、本編中も喋ってたりと…なかなかイライラさせられてしまった。
まぁ別に俺の劇場でもないから、レッドカード出して退場させることもできないのだけど…
とにかくみんなで見てるのでね、光るものはやめてようかね。
…ということで、終わり悪ければすべて悪し状態になってしまったので、あまり良い印象もないのだが…物語自体が長いし覚えられんというのもあるが。
Margot Robbie演じるネリー・ルロイが女優として初めて撮影現場に臨む。
砂漠のような何もない広大な敷地にセットが並ぶ。無声映画時代だから一切の音は無関係なので、カメラのすぐ真後ろで他の撮影も同時に行われているのが面白い。
作品は残るから、サイレント時代の作品を見ることは出来るけど、その裏側をこうして現代の映画の中に残してくれたことで、これから先の世代の人たちにも継承されていくのかと思うとニヤニヤしてしまう。
その現場で監督の演出に見事に応えてスターになっていくネリー。
余談だが、このシーンで女性監督役を演じているのはチャゼルの再婚相手。現在の奥様であるオリヴィア・ハミルトンは製作にも名前が入っている。
さらにネリーが初めてトーキーの撮影をする裏側を何度も何度もしつこく描く。これらはトーキーへの移行期の映画史として、この映画の中で残り続けることになる。それこそが重要なことだと思う。
これから先も映画は変遷していくだろうが、サイレントもトーキーもその歴史を知らない後の世代の人たちが、当時の雰囲気を少しでも感じられることが本作の大きな意義ではなかろうか…。
撮影現場を知らない人も、本作を見れば、どのようにして俳優が望んでいるのか、またスタッフは現場でどう動いているのかがよく伝わるのではないかと思う。
バミリの位置に正確に止まること。それを台詞を言いながら不自然に見せずにすることがいかに難しいかを感じていただけたら幸いである。
Brad Pitt演じるサイレント映画の大スタージャック・コンラッドが、トーキーに挑戦する際に、舞台役者の彼女からセリフの言い方の手ほどきを受けるところなんかも堪らない。こっそりと反応を見に劇場に入ると、自分の声で観客が笑っているのを見て、なんとも言えない顔をするブラピ。
後半のブラピは…"Once Upon a Time in... Hollywood"(2019)でLeonardo DiCaprio演じるリック・ダルトンにとても重なる。
そのリック・ダルトンの影武者ともいうべきスタントマンを演じていたブラピが、今度はリック・ダルトン同様にスターから転落していく様を見るのは…なんだか切ないし、ナイスキャスティングでもある。
音楽はお馴染みのJustin Hurwitz。
もうネタ切れなのか?敢えてやってるのか定かではないが、至るところでララランドのモチーフを捏ねくり回して使用している印象を受けた。カッコイイんだけどね…ん?ここはララランドだね。というのが多かった気がする。まぁ別にいいんだけど。
チャゼル
「良くも悪くも、夢の中で生きる人々の物語に、なぜか自然に引き込まれてしまうのです。常に何かに向かって進むという考え方は、明らかに達成や進歩を促すものですが、同時に巻き添えを食らうこともありますよね。特にアメリカでは、サクセス・ストーリーやアメリカンドリームを教え込まれることが多く、その代償を忘れてしまうことがあるんです。私はその代償や犠牲になるべきものに、もう少し光を当てるような物語が好きなのだと思います。」
この部分が私がチャゼルに共感できるところなのかも…チャゼルのいう、その代償を忘れて巻き添えを食らってる最中なのが今の自分なのかも…。
「好きなことに情熱を捧げるが、そこには独善的な価値観があり、結果として失われるものがある」
余談だが…レッド・ホット・チリ・ペッパーズのベーシストであるフリーが出演してたらしいが、どこにいた?
Spike Jonzeも分からなかった。