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デヴィッド・ボウイ 最後の5年間のCisaraghiのレビュー・感想・評価

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ボウイがそれまでになく冗談ばかり飛ばしてたというリアリティーツアーが行われたのは、多分『ズーランダー』に出演した頃に近いのかと。『ズーランダー』のボウイのコメディアンぶりには私も驚かされた。2000年代以降のボウイの映像をしかと見たのは多分あれくらいで、年取ってからのボウイはこんな風だったのだと今回初めてちゃんと見た気がする。年老いて、ペルソナを外して自然体になったようにも見えた。

『★』では、自らの死というイベントさえも作品の中で昇華しようとしたという印象を受けた。そこにあるのは、死が近づいても尚勝る生き生きと旺盛な作品制作意欲だったような。モータルというよりむしろヴァイタル、死のイメージが濃厚ではあるが、不思議と暗くは感じなかった。

映画には若い頃の映像も出てくる。僕はディランのようにストイックに、何が起きているかをクリアに描写することはできないが、自分がどう感じたかという強い感情を表すことは出来る。その言葉通り、1976年のダイナショーで“Five Years”を歌うボウイからは人々の痛みに対する深い共感が感じられ、こちらの気持ちも大きく動かされた。

『Song of Norway』Tシャツ、あれはかつての恋人に対する何らかのメッセージだったのだろうか?『最初の5年間』に登場したあの失恋、よほど深く傷ついたものらしい。ちなみに、インタビューに答えるアール·スリックの着てるジャケット、めっちゃカッコよかった笑。
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