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赤の涙のpongo007のレビュー・感想・評価

赤の涙(2016年製作の映画)
4.6
 1975年。ウルグアイ。軍事独裁政権が国を掌握し、人民を弾圧。反政府運動を展開する左派の学生たちを徹底的に取り締まっていた時代。

 反政府運動に身を投じた正義感の強い女子大生リリアナは、政府の人権侵害に抗議し、社会主義革命を唱え仲間たちと闘います。しかし敢えなく政府軍に身柄を拘束され、刑務所に。罪名ははっきりしませんが、国家反逆罪のようなものだと思います。

 リリアナは刑務所の中で酷い虐待を受けます。仲間の居場所を吐くように詰問され、黙秘すると精神的、肉体的な拷問に掛けられます。刑務所長、看守らに何度もレイプされて、幼い自分の息子とも面会させてもらえず、ぼろぼろになっていくのでした。しかし、強靱な精神力と、自分は正しいことをしているという信念が彼女の精神をぎりぎりのところで保つのでした。そして、リリアナは生き地獄を耐え抜くのでした。

 2012年。ウルグアイの首都モンテビデオ。軍事独裁政権による非人道的犯罪が行われてから40年近くたち、中年になったリリアナたち、当時の学生が記者会見を開き、軍事独裁政権の蛮行を告発するのでした。リリアナたちの言葉には重みがあり、民主主義、自由の大切さを、腐敗した権力の恐ろしさを訴えていくのでした。リリアナたちの闘いは、無駄ではなかったのです。


 権力は必ず腐敗する。嘘をつく。人民を騙す。批判を受けると暴力に訴える。そうした暴走を止められるのは、良識ある人民の勇気ある行動のみ、ということをあらためて感じました。

 今も世界の各地で、権力が暴走しています。ミャンマーでクーデターを起こした軍部は、平和的デモを行っている人民を狙撃し虐殺しています。これまでの歴史から多くを学んだ私たちは、こうした権力の暴走を止めなければいけない。何らかの形で。せめて一人一人がなにかしらできることがないか考えることからはじめてもいいと思います。

 自由と民主主義を取り戻すため、40年前にウルグアイで命を掛けて闘ったリリアナのような人たちがいたことを忘れてはならなりません。その精神は受け継がれて行かなければならない。なぜなら、権力は必ず腐るから。という深い映画でした。
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