磨

マヤの秘密の磨のレビュー・感想・評価

マヤの秘密(2020年製作の映画)
3.8
戦時中にナチスから暴行を受け妄想と悪夢に囚われた女性の姿を描いたサスペンス。

1950年代アメリカ、街中で偶然会った男に過去の悪夢が蘇ったロマ民族だった女性(ノオミ・ラパス)が復讐心から男を殺害しようと誘拐・監禁するーという物語。

主人公の15年前の悲惨な記憶が次々と蘇ってきたり監禁した男の秘密などが徐々に明らかになってくるが、根幹を成す部分の真実ではない。パズルで例えるなら四隅から端のピースまで徐々に埋まっていくのだけど中心8割くらいが未完成な状態。
その状態で取り憑かれたように普通のいいお父さん風の男を拷問する女性。各々の配偶者まで物語に加わってきて、予測できない展開にハラハラ、ドキドキ。評判はあまり芳しいとはいえないけど、個人的にはなかなか楽しめた作品だった。

確かに「アレでいいのか?」と感じる描写があるし、ラストもやや強引に終わらせた印象は否めない。その辺りを考えると物語そのものや人物描写に対してのこのスコアなら頷けるかも(笑)

ただ、ドラマ映画よりホラーやスリラーを愛する人間としては、人物よりも映画的な面白さを評価したい。中盤に感じた「どうなるの???」という感覚はミステリーやサスペンスの基本。
自身もロマの血を引き、製作総指揮も務めるノオミ・ラパスの緊迫感溢れる演技力。彼女が描き出すサスペンスはひと味もふた味も違うと思った。


一つだけ間違いないのはこれも戦争の残酷さを描いた映画という事。戦争中に「オペレーション・ミンスミート」みたいな事もあったのだろうし、戦後何年経っても本作のように苦しむ人もいるのだと思う(言動から戦争大好き人間だと思われてそうなので、たまには真面目な事言ってみる笑)
磨