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バイバイ、ヴァンプのhorahukiのレビュー・感想・評価

バイバイ、ヴァンプ(2020年製作の映画)
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愛は自由だ!!

かなり炎上してるんでどうしようかなと思ったけどホラーなんで行ってきた。上映停止を求める署名運動まであるらしい…めちゃくちゃ感想書きづらいな…😅

内容的には性別関係なく人を愛する大切さを説いていて、愛の形は人それぞれっていうメッセージを込めた作品って感じだった。「コレが正しい!」とか「こうあるべきだ!」とか、既存の固定化された価値観をときほぐし、強制されることも強制することもない自分自身の中にある「愛」に正直に生きろという感じ。

ただね〜これどうかね?

ところどころで一言多いなっていうセリフや差別意識の塊のような演出があった。私は映画における「茶化し」は大好きだし、根幹にあるメッセージが真っ当なものであれば、そこに導くための枝葉の表現は(根幹にいたる意図を読み取れるものであれば)逸脱をあまり気にしないタイプなんだけど、真正面からこの題材を扱っておいてこのセリフと演出は採り入れないよな〜と思うところがチラホラと…。

製作陣の考えの根っこには本当に愛があるのか?と疑ってしまう。これでは「愛は自由だ!」という大義名分の隠れ蓑でもって根底に眠る差別意識の帳尻合わせをしたように捉えられても仕方ないように思う。『ゲット・アウト』でジョーダンピールが批判したことを地でやってるイメージ。

吸血鬼という、マイノリティの象徴的モチーフを利用することについては色々と意見があるのだろうけど、吸血鬼には、吸血行為=性欲のメタファーという要素が必ずついて回るために差別的演出が助長されてしまっているように感じた。これまた「吸血鬼だから」という隠れ蓑が用意されてしまうのだけど、そこは製作陣が吸血鬼を選択したことの必然性の問題に直結するので、他のモチーフにした方が良かったのかも…。

『ボディ・スナッチャー』的にお話を持っていくことで、断絶された価値観同士の衝突を無益なものとして描き、強制しない・されない「個」としての価値観の有益性と、それを尊重することの必要性へと論を進めようとした意図も汲み取れる。吸血鬼モチーフを利用しての価値観の対立については『地球最後の男』へのリスペクトでもあるのだろうし、そう考えると対立を虚しいものだとしてアレンジした本作からは吸血鬼であることの意味も確かに感じるのだけど…。

う〜ん…やっぱりこれは炎上しても仕方ないかも…。
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