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MINAMATAーミナマターのILLminoruvskyのレビュー・感想・評価

MINAMATAーミナマター(2020年製作の映画)
4.2
原題『Minamata』 (2020)

監督 : アンドリュー・レヴィタス
脚本 : デヴィッド・ケスラー
撮影 : ブノワ・ドゥローム
編集 : ネイサン・ヌーゲント
音楽 : 坂本龍一
出演 : ジョニー・デップ、美波、真田広之、國村隼、加瀬亮、浅野忠信、岩瀬晶子、ビル・ナイ、他

W・ユージン・スミスとアイリーン・美緒子・スミス夫妻の写真集『MINAMATA』(1975年)を基に、日本で社会問題になった四大公害病、企業公害である「水俣病」の実態を世界に発信した写真家ユージン・スミスが1970年代、熊本県水俣市の漁村に滞在し、水俣病の惨状を取材した日々を描いた社会派ドラマ映画。

「公害」映画。

素晴らしかったです。

実際にあった出来事をベースに、チッソの社長がユージンにネガの買収を持ち掛けたり、仕事場が放火される、などの映画ならではのドラマチックな脚色(ウソ)があるものの、ユージンが水俣で過ごした日々を、スタイリッシュで、光の三原色(赤、緑、青)を意図的に取り入れたライティング演出も印象的などこを切り取っても美しい撮影、有名無名問わず主要な人物からエキストラに至るまで全員が名演ともいうべき熱のこもった素晴らしい演技と演出、坂本龍一の音楽、社会派ドラマとしての伝えたいメッセージ、を飽きさせない展開のエンターテイメント性で描いた、魂が揺さぶられる見事な一作となっている思います。

本作のクライマックスで、「水俣病」を象徴し、「水俣のピエタ」と称され、後にロバート・キャパ賞を受賞する、人間の命の輝きと美しい絆、警告と希望を写真フィルムに焼き付けた「入浴する智子と母」を撮るシーンは、「写真の力」を「映画」に焼き付けた本作で最も美しい見事なシーン。

「これは、つくられるべき映画だと思った。水俣病で多くの人が苦しんだ。そして、いまも世界中でおなじようなことが繰り返されている。さらに私たちはいま、ウィルスと戦争をしている状況だ。私たちはいま、見えない敵と闘っている。そういった意味でも本作は、この時代に観てもらうべき作品なのです。水俣のみなさんが辿ってきた軌跡とともに、企業の腐敗が存在しうること、それが見逃されるならば、はびこってしまうという事実を伝えたかった」
- ジョニー・ディップ -
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