ワンコ

逃げた女のワンコのレビュー・感想・評価

逃げた女(2019年製作の映画)
5.0
【示唆】

シンプルに構成されたフレームワークのなかで展開するストーリーは何を示唆するのだろうか。

3人のそれぞれ立場の異なる先輩。

それぞれに登場する男性によって伺い知れる会話では明らかにならなかった先輩の状況。

そして、自分のこと・比較・揺らぎ。

実は、示唆しているのは、ガミを通して見える、この作品を観る人自身の状況や、気持ちの揺らぎなのではないのか。

(以下ネタバレ)

バツイチ。
独身自立。
そして、配偶者あり。

皆、自分の人生をしっかり生きているように思えてしまう。

自分は…。
ずっと夫と一緒。
夫が望んだから。

これは自分が本当に欲したことなのか。

そして、
クレーマーのような男。
ストーカーのような男。
配偶者ありの配偶者。

バツイチ ← クレーマーのような男「普通、野良猫を餌付けしないでしょ」

独身自立 ← ストーカーのような男「一回エッチしたじゃないですか」

配偶者あり ← 配偶者は、相手を意に介さず

どこか羨ましく見えた先輩たちにも、人には見せない何かがあるのだ。

自分には、たとえくだらないことでも、平穏な日々の行手を阻むことさえない。

足元をおぼつかなくさせる波もない。

これは退屈を意味するのか。
或いは、夫の側に閉じ込められていると言うことなのか。

結局、比べてみたところで答えは出ないのだ。

他人(ひと)の日常の煩わしさや困難を見たところで、優越感もない。

女性というジェンダーな視点で考える人もいるだろう。
困難を避けて過ごして来た人には考えさせられることがあるのかもしれない。

初めにガミが見た波の映像と、最後に見た波の映像は、異なる意味を持ったのではないかと思う。

何か重要な示唆を隠した作品だと思う。

僕はすごく好き。
ワンコ

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