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魚座どうしのtetsuのレビュー・感想・評価

魚座どうし(2020年製作の映画)
4.0
ndjc若手作家育成プロジェクト2019の1週間限定上映で鑑賞。

小学4年生のみどりと同じく4年生の風太。
お互いに父がおらず、何かが欠けた母親と暮らしている少年少女。
彼らのささやかで、いびつな日常。

『あみこ』の山中監督最新作ということで、これをみるために今回の3作品を観たというのもありましたが、さすが、その期待を裏切らない、満足度の高い一作でした。

過去作と比べると、長回しが多かったり、色調が抑えられていたりと、かなり落ち着いた印象を受ける作品ですが、随所に見られるジュブナイル映画*からの影響がスゴい。

*正式には、そんな言葉はないが、ここでは少年期を題材にした映画を指すこととする。

『あみこ』で、ハル・ハートリーのオマージュをするなど、かなり過去の名作から影響を受けて、監督が作品作りをしていることは知っていたのですが、本作では『スタンド・バイ・ミー』(大人への反発)、『E.T.』(理科室)、『大人は判ってくれない』(走る)、といった作品を彷彿とさせられる場面が多く、ジュブナイル映画の分脈を踏まえた上で創作をしている姿勢に、ただ、ただ、心が踊りました...。

そして、そんな本作のポスターに書かれたキャッチコピーが、特に秀逸。


ここから、ネタバレ注意


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「ふたりが出会う、わかってしまう。」

『大人は判ってくれない』を踏まえたうえで、元ネタとは異なった着地をしているようにも感じる本作のラストシーン。
最初こそ、そのシーンに困惑しましたが、このコピーを観ると、単なる模倣では終わらせず、その上にオリジナリティを乗せている、監督の作家性が、より浮かび上がってくるようでした。


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というわけで、
宗教にのめり込む大人や、情緒不安定な大人、支配的な態度をとる大人など、子供と対比して描かれる異常な人物描写にも注目してほしい一作。
理不尽な大人たちによる世界で懸命に生きる子供の姿には、誰しも刺さる部分があるでしょうし、何人かに一人には実体験も含めて、深く突き刺さる一作だと思いました。

P.S
過去の作品で、残酷な子供がカエルに爆竹を仕掛ける映画を観た記憶があって、勝手に『スタンド・バイ・ミー』だと思っていたんですが、改めて確認すると全く登場しませんでした...。笑
一体、あれ、なんの作品だったんだ...?

2020/4/23 追記
「残酷な子供がカエルに爆竹を仕掛ける」というエピソード。
どうやら、父から聞いた幼少期の話でした。いや、あまりにもインパクト大きすぎて、完全に脳内映画の一場面として完成されてしまったんだが......。笑

2021/3/4 追記
文で断定的に書いてしまった部分を、少し修正しました。あくまで、個人の解釈ですので、観た方は、それぞれの感想を大切にしていただければと思います。
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