ライアン孤独な海賊王

潔白のライアン孤独な海賊王のレビュー・感想・評価

潔白(2020年製作の映画)
4.3
未体験ゾーンの映画たち2021で鑑賞。

韓国の田舎町で行われた葬式で参列者が複数人毒殺される事件が起こる。振る舞われたマッコリに農薬が仕込まれていたのだ。

ソウルで優秀なエリート女性弁護士として世間に名を馳せていたアン・ジョンインは、事件の様子を映すTVニュースを見て驚愕する。現場は彼女の実家で、葬式は彼女の父親のために行われたもの。そして容疑者として逮捕されたのは、少女期に家出をして以来会いに行ってもいなかった彼女の実の母親だった。

1度は捨てたはずの故郷に急遽戻ったジョンインは、自閉症の弟や父の妹である叔母、地元警察の刑事になっていた同級生と再会、おおよその事件概要を掴んだ後に拘留中の母ファジャに面会に行く。だが母は事件のショックから急激に認知症が進み、成長した娘の顔を見てもなんの反応もせず、事件のこともまるで覚えていなかった。ジョンインはファジャに娘であることをとりあえず伏せながら弁護士として振る舞い、母の拘留を解くべく事件の真相を探り始める。

母の担当弁護士が確証なく状況証拠のみで容疑者にされている母親を積極的に擁護していないことに違和感を覚え、人気のない夜に事件現場になった実家を調べに訪れたジョンイン。そこで隠れていた侵入者に襲われ負傷してしまう。そのことから毒殺事件の真の黒幕は別にいると確信し、被害者らを詳しく調べていくうちに亡くなった父や葬儀に出席し被害にあった現市長も含め数名が関わる土地の再開発計画に辿り着く​───。

ミステリーとしての謎解きの面白さと主人公家族に起きた悲劇的な出来事が上手くリンクしながら進む脚本は見事。少しテイストは違うものの東野圭吾がミステリー5冠と直木賞を受賞し映画化されたアリバイトリックの名作『容疑者Xの献身』を思い出した。

自分が信じる近しい人が犯罪に加担していたとしたら?人としての倫理や良心を揺るがす事態に陥った時、人はどう振る舞えば良いのか。

ラストは賛否両論あると思う。守るべきものは、その人の立場の違いによって変わる。その選択は周りにとって好ましいとは限らない。だが人である以上、どちらかを選ばねばならないとしたら、自分ならどうするのか。見終わった後に色々と考えさせられる作品でした。