むぅ

チェチェンへようこそ ーゲイの粛清ーのむぅのレビュー・感想・評価

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雨上がりの虹を見たい

空を見上げて虹があると、雨のせいでちょっとうねった前髪も、今日はこれじゃなかったなという雨に向かない靴も、まぁいいかと思える。

6月はプライド月間。
1969年6月
セクシュアルマイノリティの当事者が初めて警官に真っ向から立ち向かって暴動となった事件とされる〈ストーンウォールの反乱〉があった。
その1年後、事件を記念し誰もが自分らしく生きられる社会の実現のために行われたパレード。
その象徴である〈レインボー・フラッグ〉はセクシュアルマイノリティに理解があったとされるジュディ・ガーランドの代表作の『オズの魔法使』での劇中歌である「虹の彼方に」の"虹"からきているとも言われている。
そして〈ストーンウォールの反乱〉は彼女が亡くなった直後の事件だった。

今、SOGIにおいて自分らしく生きられなかったり、そのために辛い思いをしている人たちが、晴れやかに虹を見上げるような気持ちで日々を過ごせる日はいつ来るのだろうか、と思う。
もちろん、そうなったとして現在の"土砂降り"は決してなかったことにはならないのだが。

6月はプライド月間。
いつもより積極的にSOGIについて触れた作品を観ようと思った。

誰もが自分の観たい作品を、観たいスタイルで、その人なりのタイミングで楽しむのが一番と思っている。
それでも多くの人が観てくれたら、と願わずにはいられない作品。

劇場で観たかったけれど、途中しんどくなったらどうしようと思って配信を待っていた作品だった。
結果、その判断は個人的には正解だった。
映し出される映像、その言葉たちにちょっと息切れして、珍しく何度か止めながら観た。

「あなたの国にゲイに対する拉致や拷問があるという疑惑がありますが?」
「チェチェンにゲイは存在しない(から、迫害のしようがない)」

映し出される残酷な映像に、これってホロコーストと何が違うのだろうかと思った。
その国の首長の口から笑顔と共に出た(民族浄化〉という言葉に指先まで冷たくなった。

日本だってまだまだ空に"虹"がかかる日は遠い。
そのために自分の出来ること。
例えそれが"ハチドリのひとしずく"だったとしても。


【ハチドリのひとしずく】
森が燃えていました
森の生きものたちは われ先にと
逃げていきました
でも クリキンディ という名の
ハチドリだけは いったりきたり
口ばしで水のしずくを
一滴ずつ運んでは
火の上に落としていきます
動物たちが それを見て
「そんなことをして いったい何になるんだ」
と いって笑います
クリキンディは こう答えました

「私は、私にできることをしているだけ」




今、その"ハチドリのひとしずく"は当事者の方々の"涙"であるような気がしてならない。
まだまだ"虹"が上がらない現状の"雨"さえも。


雨上がりの虹のために、
自分の出来ることを。
むぅ

むぅ