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キャンディマンのsymaxのレビュー・感想・評価

キャンディマン(2021年製作の映画)
3.5
"…キャンディマ…"
"しーっ…しっ…ダメ…言わないで…"

"カブリーニ・グリーン"に建てられていた団地は老朽化が激しく次々と解体され、住人が転居を余儀なくされてから10年…将来有望なアーティストであるアンソニーは、怖い話として聞いた都市伝説に何故か惹き込まれてしまいます…それは"ヘレン"という大学院生が起こした世にも恐ろしい事件…中々思いどおりの作品を作り出せないでいたアンソニーは、作品のインスピレーションを得る為にほぼ廃墟と化しているカブリーニ・グリーンへ…そこで出会ったのは、少年の頃"キャンディマン"に出会った男バーク…バークから話を聞いたアンソニーは、益々"キャンディマン"にのめり込むようになり、やがて…

先日再鑑賞したばかりの一作目と同じ時間軸となる続編…新たな都市伝説となったヘレンの物語を独特のタッチの影絵で表現しているセンスに脱帽です。

製作と脚本にジョーダン・ピールが参加している事もあり、旧作で示されていた人種差別や貧富の格差はより明確となり、旧作の雰囲気も継承した良質のホラー…

ヘレンと同じく、将来有望な若者が"キャンディマン"にある意味で取り憑かれ、堕ちていく話ですが、カブリーニ・グリーンの住民達にとって"キャンディマン"は、恐怖の対象でありながら、面白半分で召喚した白人達が次々と血祭りにあげられる事で積もり積もった貧しき黒人達の恨みを晴らしてくれるダーク・ヒーロー的な意味合いも併せ持つ存在でもあるような気がします。

アンソニーに"キャンディマン"について説明したバークのその後の行動が今一つ謎なのですが、キャンディマンを恐怖の対象ではなく、信仰と捉えるとスッキリします。

逆さ文字ユニバーサル等のロゴは、鏡の向こう…つまり"キャンディマン"からの視線を感じさせ計算された恐怖は鑑賞後も付き纏い何とも言えない不安感を抱いてしまいます。

旧作をリスペクトしつつ、旧作以上の魅力あふれる画柄に、監督の才能を高く評価します。

旧作を鑑賞していなくても問題はありませんが、旧作を鑑賞してから本作を観た方が本作の余韻を深めその魅力をより引き立たせるとは思います。
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