スチールラグ

のさりの島のスチールラグのレビュー・感想・評価

のさりの島(2020年製作の映画)
4.5
つい最近、故郷の叔母が、
家系図なるものを送ってきた。
一番上に、法事の度に聞かされた"足軽じいさん"の名前が😅
自分とはいったい何者か。
「木の股から産まれてきたんじゃないけん」
電話の向こうで、おばちゃんが屈託無く笑う。

「あなたは、本当はどこのひと?」
"正体不明"の男に女性が問いかける。
問いただすのではない。優しく穏やかだ。
これも、"のさり"なんだなと思う。
ようやく自分自身が何者なのか見失っていることに気付く。

実は、僕の故郷にも"銀天街"という商店街がある。
寂れた商店街を一人歩く女性。
ふいに、現れる"まやかし"のファンタジー。
たとえまやかしでも彼女には必要だったのだと思う。
昔、商店街で実際に起きた大火の記録映像を見る地元の方々。
その表情がとても自然で、じっと見つめる目に、
故郷への想いが込められているようで、心打たれる。

音の映画でもあると思う。
波の音、風の音、時計の音、たい焼き器の音。
優しく包み込むように響いてくる。
そしてなんといってもブルースハープ。
さびれた商店街の角で、一人、女の子が吹いている。
このハーモニカが20歳と思えないほどブルージー。
最高の劇伴。
音を聴いていて(観ていて)、とろとろと気持ち良くなる。
あまりに心地よくて、どんな終わり方でもいいと思っていたら、
ラストもやはり、"音"でした😄

邦画らしい心癒される作品。


追記
ユーロスペース上映最終日ということで、監督自ら登壇され、短いティーチイン。
会場にいらっしゃった天草ご出身という方が「涙が出た」とおっしゃる。
一生懸命、観客と思いを一つにしたいという監督さんの熱意が伝わって来ました。
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