marikabraun

メイド・イン・バングラデシュのmarikabraunのレビュー・感想・評価

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私がユニクロを始めとするファストファッションで服を買わなくなった理由。服飾学生の時分にファッション業界への疑問を持つきっかけになった、2013年のラナプラザ崩落事故から、記憶に新しいウイグル問題まで、安価な服を求める消費者のニーズに応える裏で、踏みつぶされてきた人権がある。劣悪な労働環境と男尊女卑、覚悟を決めて声を上げる人の口を塞ごうとする言葉たちに息が出来なくなる。だけどいかなる時代もこうして必死で戦う人が居たからこそ、地を這うような変化が生まれて来たんだよな。

何をするにも一人で出掛けてしまう私が誰かを映画に誘うなんてとても珍しいのだけど、この問題を共有できる唯一の友達に声を掛けて観に行った。映画はようやくスタートラインに立った所で幕を閉じる。まだ何も始まっても終わってもいないじゃないかと、二人して狼狽えながら映画館を後にした。自分が本当にちっぽけで無力な人間であることは知っている。何かを大きく変えることは出来なくても、より良い選択を、自分が納得しがたいものには加担しない姿勢を続けていく。服が好きな人、服に携わる人、この現実を知らずに「Made in Bangladesh」のタグが付いた服を笑顔で買い物している人たちに届いて欲しい。そしてどういう選択をするか。私にとっておそらく最後の岩波ホール、閉館前にまた足を運べて良かった。
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