塩煎り銀杏

滑走路の塩煎り銀杏のネタバレレビュー・内容・結末

滑走路(2020年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

良い映画だし色んな人が観るべき映画だと思うんだけど、結局隼介は自死を選ぶんだよなという目で見てしまうと、翠とのお別れのシーンに感じる未来への希望=未来への滑走路って結局閉ざされていたってことなのかという強烈な絶望感に包まれる。
これって「こんな風に未来を感じられる瞬間があっても、いじめによって蝕まれた精神は回復することはないんだよ」っていうメッセージなのか。

"いじめはその時だけじゃなくその後の人生も壊す"って、あまりしっかりと認識されていないと思う。自分もそういう価値観が薄かった。
だからこの映画は色んな人に観られるべきで、軽はずみにいじめに手を染めてはいけないというメッセージは広く伝えられるべきだと感じた。

映像は綺麗で、テーマの残酷さとのコントラストが印象的。
時系列がバラバラの内容が繋がる構成は上手だった。
もっとも良かったのは坂井真紀が鷹野君に語るシーン。

鷹野君が信念を持って官僚になってもどん詰まりなのは、これはどう捉えるべきなのかな。
別に隼介の母親と会って言葉を交わしても職場でのストレスは緩和されないし、あの類いの仕事は負荷軽減なんて簡単なもんじゃないと思う。
日本の官僚のしんどさや閉塞感ってのは作品で描きたかったメインのテーマではないと思うんだが。

○疑問点
・子どもをおろしたと嘘をついたのって離婚する時わからなかったものなのだろうか?
・個展を訪れるくらいの関係は続いているのに子どもを知らないってあり得るのか?
 子どもを産む前提で別れたのかもしれないけど、顔合わせたら子どもの話題に触れるだろう、さすがに。

○その他
・中学生時代の翠役の子の演技が良いなと思って観ていたが、今は活動をしていない様で残念・・・。
・水橋研二は月光の囁きの頃から見た目が変わっていなくて驚く。
・坂井真紀も母親役に違和感のない歳になったか・・・。
・鷹野君、登校拒否もしてあんなに苦しんでたのに官僚にまでなる根性すごい。

詩集はズシンと重そうだが、どこかのタイミングで読んでみたい。