オムとライス分ける子ちゃん

護られなかった者たちへのオムとライス分ける子ちゃんのネタバレレビュー・内容・結末

護られなかった者たちへ(2021年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

2011年震災後の宮城。
話は震災当時と現在を行き来する。
ストーリーが読める読めない、犯人を予測して盛り上がる作品ではないです。

中山七里の原作は未読ですが、読めば良かった。

国や厚生労働省からの圧力。
不正受給者。スティグマ。
申請者に自己責任がある生活保護。
あくまで本人の申請。原理原則。
役所から勧めることは出来ない。

日本人ほんとうに声あげない国民性ですよね。

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所長の城之内
「2013年生活保護法改正案が国会を通過し、翌年から施工されました。この改正案の主の目的は申請の厳格化と扶養義務者への支援強化です。生活保護利用率が日本では1%台なのに対し、アメリカ・ヨーロッパでは5%-10%!そうした現状に対し国連は日本政府へ貧困問題に関して勧告まで出してきた。そういう国に住んでいるんです、我々は。君に言ってもわからないだろうけど。」

「震災では多くの人が理不尽に命を奪われた。それに比べれば君たちの境遇には理由がある。そういうことをよく考えてみたらどうですか。他人のせいにばかりせず!!!」

職員の三雲
「死ぬ時ぐらい人間らしく死にたい。誰かに看取られて。そういうの、もう難しいんですよ。死ぬ時は1人だから。」

カンちゃんのSNS
「生活保護の現場ではみんな懸命に働いています。不埒な1%以外は。でも一生懸命だけはだめなんです、なぜなら生活保護は最初で最後のセーフティーネットだからです。飛び越えてください。原理原則をやぶってでも、そこを突破してください。命を救ってください。申請者たちに自己責任を押し付けるなら職員たちも責任をとってください。私もこれが終わったら責任を取るつもりです。その上で護られなかった人たちへ。
どうか声をあげてください。
心を閉ざしていると自分がこの世でひとりぼっちでいるような気になります。
でもそれは間違いです。
この世は思うより広くあなたのことを気にかけてくれる人が存在します。わたしもそういう人たちに救われたひとりだから断言できます。あなたは決してひとりぼっちではありません。
もう一度。いや何度でも勇気をもって声をあげてください。不埒なものがあげる声よりも、もっと大きく。もっと図太く。」

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この一連のシーンに多くを学びます。
瑛太演じる三雲の言い方こそ悪意あるように見えますが、全部事実ですよね。

里子に出した子に扶養紹介をお願いしなければならないシステム。
わたしの友人が幼い頃に離婚して以来一度も会っていない父親の扶養をお願いする書類が届いたことがあって友人本人も驚いていましたが、こういうことだったのか。

全ての人を救うことは出来ないって言いながら職務にあたる生活課の職員。

健康で文化的な最低限度の生活。
必要とする人に届いてほしい。

最近の邦画でぶっちぎりで良かった。
餓死すると分かっていながら辞退届を受け取ったのは罪なのか?仕方がないことだったのか?原理原則は間違いなのか?

この先、何回でもみると思う。