のんchan

タイガーテール -ある家族の記憶-ののんchanのレビュー・感想・評価

3.8
何気に選んだ90分作品。
捻りのないストレートに響くノスタルジックヒューマンドラマ。

ある男が半世紀を振り返り、人生を見つめ返し、疎遠だった娘と気持ちを通じ合わせていく...


1950年代、国民党統治下の台湾。父を1歳で亡くし、一時期祖父母に預けられていたピンルイは、その地で裕福な娘ユアンと出会い毎日一緒に遊んで過ごした。
その後、生まれた土地(虎尾鎮)に母が連れ戻し、貧しいながらも母を助けて同じ工場勤めをしていた。
青年期になり連絡の取れなかったユアンと偶然に再会し、あっと言う間に恋仲に。夢のような若い頃の日々が...
しかし、身分の差に引け目を感じ、工場長に勧められるままその娘と愛のない結婚をしてしまう。
当時の台湾の若者はアメリカへ行けば豊かな暮らしが出来ると信じていた。
義父が出したお金でニューヨークに渡り、スーパーマーケットの仕事をしながら娘を育てたが、そこにはずっと愛は芽生えなかった。
現代のニューヨーク。立派に成人した娘、離婚を申し出る妻。
1人暮らしのピンルイはネットを通じてユアンと連絡がとれるようになる...


台湾の郷愁をそそる風景、ニューヨークの賑わいのある街並み。
ただ家族を養うことに必死だった時代。
過ぎ去ってふと愛は遠くじゃなく近くにあったと気付く後の祭り。
しかし、父を思う賢く優しい娘の存在に救われる。

誰しもが歳を重ねた時、なんらかの思いを走馬灯のように感じるものだろう。
必死に生きねばならない時がある。ただただ積み重なる日々。

悔いのない人生にするには?
そんなヒントが見えてくる良質な人間讃歌のようでした。
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