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父、兵士、その息子のonoyameのレビュー・感想・評価

父、兵士、その息子(2020年製作の映画)
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「男にとって最も大変なのはタフであること」とは本作の父の言葉だが、この言葉はまさに本作を象徴する一言で、本作に登場する男たちはみなトキシック・マスキュリニティ(有害な男らしさ)に苦しんでいる。
そして、苦しんでいることを自覚しながら対処する手立てを見つけることができないことに、さらに苦しんでいる。
ラストシーン、「前に進むだけだ」という一見ポジティブな父の発言さえも彼の首を自ら絞めているようにさえ思える。

一つの家族史の一部を垣間見ただけではあるが、本作のタイトルが『父、兵士、その息子』であるのは、家族の歴史こそが新たな兵士を生み出しているからだ。そこには逃れられない親の期待が確かにある。
愛国心という言葉は繰り返し出てくるが、父と弟のために兵士になった長男は戦争がなぜ起こるのかさえ知らない。

本作を鑑賞後は非常に複雑な気持ちになる。かつて長男が語った「国のために戦うことは尊敬しているが、一生抱え続ける障害を受ける価値はない」という言葉が頭に残り続ける。
結局のところ、戦争によって一人の兵士だけでなく、その家族が人生を左右するほどの大きな影響を受ける。果たしてその価値があるのだろうか。その価値は「愛国心」という言葉だけで成り立つものなのだろうか。

長男が入隊後、基礎訓練修了式の様子も撮影されているが、その演出については正直ドン引きしたし、心が冷めた。かつて、アメリカでは第二次世界大戦時に多くの若者が自ら志願して入隊したが、その当時の熱さを抱き続けているような違和感があった。
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