むらむら

インフィニティ 無限ループのむらむらのレビュー・感想・評価

5.0
※英語版The Infinite Manの方にネタバレ考察書きました。ご興味ある方はぜひ※

「ループ映画マニア」に向けた挑戦状としか思えないこの作品。

アマプラの片隅に、こんなにも複雑で、「ループ映画マニア」の心を躍らせる作品が眠っていたなんて!

制作はオーストラリアで、登場人物は僅か3人。CGを全く使わず、基本的に砂漠のモーテル(南オーストラリアのwoomera traveller's villageでロケ)一箇所で撮影、という低予算映画なのだが、考えに考え抜かれた脚本が素晴らしい。1000円カットいったら、めっちゃキマった髪型になってしまった、くらいのお得感ある。

付き合って一年目の記念日を祝おうと、モーテルにやってきたディーンとラナのカップルが主人公。

ディーンは自分の思う「完璧な交際一周年の記念日」をラナに提供しようとするも、どうしても上手くいかない。そこに、かつてのラナの恋人・テリーが出現し、ディーンはラナの浮気を疑い始める。そんなディーンの嫉妬に耐えかね、二人は決裂。ラナはテリーとモーテルを去ることに。失意のディーンは、一年かけてタイムマシンを完成させ、過去に戻って「完璧な記念日」をやり直そうとするのだが……という内容。

ちょっと前に観た「LOOP/ループ -時に囚われた男-」のように、同じ時間軸に複数の自分が存在するという前提で、さまざまな出来事が起こる。

そして、それらが網の目のように張り巡らされ、全ての伏線を回収していく。先日観た「ドロステのはてで僕ら」にも通じる、理系脳の書いた脚本という印象。

確かに、一回観ただけだと、「えっ!? これってどういう意味!?」というシーンが多いかもしれない。だけど、よくよく考えながら観てみると、同じ台詞の内容がループによってひっくり返ってる!と気付く瞬間が、少なくとも数回はあると思う。そして、全体像を理解できたときの納得感(一回鑑賞しただけでは難しいかもですが)! 俺的には、チャーリー・カウフマンの作品とか「メメント」を観たときのような満足感を感じることが出来た。

こんなに無名な作品なのに、なぜかドミニカ共和国でリメイクされてる(「Melocotones/Peaches」)のも、俺みたいなマニアがいたんだろうなー、と、嬉しくなってしまった。これは絶対に、ループ映画の隠れた名作。

ところで、この作品をより一層理解したくて、考察サイトを探そうと思ったら、それすら発見できないくらい知名度がなかった(泣)。

仕方ないので、自分で時系列をシコシコと作ってみました。凄く良い作品だと思うので、この作品を理解する一助になれば幸いです。タイムトラベルものならではの不思議なハッピーエンドを、ぜひ皆さんも楽しんでほしいです!

(原稿用紙15枚分くらいあるので、この作品の「英語版」(The Infinite Man)のほうにネタバレとしてあらすじを投稿しました)
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