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あのこは貴族のmasayaのレビュー・感想・評価

あのこは貴族(2021年製作の映画)
4.2
 地方出身のミキと上流家庭のお嬢様のハナコ、出会う筈のない2人の女性が出会うことで浮き彫りになる、現代の生き辛さや閉塞感の根底にあるもの。それは階層間だけでなく、階層の内側で脈々形作られていた。これは彼女達の目線を通して、初めて言語化された現代社会の一つの横顔だ。
 地方から上京した者が必ず早い段階で気づく「階層」の存在に焦点を当てながら、階層分化そのものだけではなく、同一階層の中での不文律や役割付けによる相互監視がそこに属する人の人生に大きく作用していることを指摘していて目が覚めるようだった。
 その上で彼女たちの選択が希望でもあった。違う階層同士で共感を得たとしても、根本的な価値観の違いが無くなるものではない。階層は足枷かも知れないが、互いにとっての揺り籠でもある。2人はそれぞれの居場所で輝く方法を探す。ポジティブで依存のない連帯。
 女性同士の関係性をどうしても百合かライバル関係かに持っていきたい勢力があるのは承知で、この映画は敢えてもっと軽やかな連帯感に行き着く。終盤の1シーン、同じ東京タワーを並んで見ていても2人が感じている物はまるで違うだろう。2人は敵でも仲間でもない。ただそこにある確かな共感が見てとれて美しい場面だった。

追記。SNSの使われ方が随分ユニークというか、2016年頃のハイソサエティが使うのはまずフェイスブックで、手軽な興信所のように経歴や人柄を確かめるツールとして用いられていたのが印象的だった。そこは何より身許の確かさが重要なコミュニティなのだな。
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