竜平

タミー・フェイの瞳の竜平のレビュー・感想・評価

タミー・フェイの瞳(2021年製作の映画)
4.0
かつてアメリカで一世を風靡したという実在の伝道師「ジム・ベイカー&タミー・フェイ」夫妻の栄光と失墜を妻タミーの半生と視点から描いていく。実録風のヒューマンドラマ的伝記映画。

今作はというと、1970年代から1980年代にかけてアメリカにて放送され人気を博したという「PTLクラブ」なるテレビ伝道番組、その出演者であり立ち上げた張本人でもある夫婦二人の栄枯盛衰を写したというドキュメンタリー映画『The Eyes of Tammy Faye』を原作としてるんだとか。まぁ、余談として。製作・主演がジェシカ・チャステイン、で他にもアンドリュー・ガーフィールドやヴィンセント・ドノフリオなど出演。主人公タミーはクリスチャンの家庭で育ち、家庭内ではとある孤独にも苛まれつつ、やがて信仰に目覚めその道をひたすらに突っ走っていく。後に夫となるジミーとの出会いやらあって、もちろんいろんな影響は受けてるんだろうけど、なんか元からポジティブというか好奇心旺盛というか、そんな姿が印象的。またテレビ番組という媒体にいち早く目をつけ、そこからあれよあれよという間に頭角を現していく。

そもそもキリスト教を説くこの「伝道師」のイエスへの祈りとか救いがどーのこーのとか、ピンとこない人はこないよねって話で、俺もその口で、なんだけど例えばフェミニストや同性愛者に対して当時(?)のクリスチャンというのがどのような教えの元にいてどのような考え方だったのかなどなど、会話の節々から窺い知れたりもして、結局はその中で動く者たちのヒューマンドラマとなってるからなんとも見入ってしまう。メイン二人の味のある演技はやっぱり見どころ、で今作はとくにジェシカ・チャステインが他の作品からは想像もつかないような立ち振る舞いや喋り方で主人公を好演中の好演。特殊メイクと、化粧としての大胆なメイクとでマジで普段とは別人。夫とのすれ違いや衝突や他人からの目など人間模様がある中で、人として女性としての芯の強さが垣間見れる場面にはなんか心を揺さぶられてしまうはず。歌手としての活動が後の展開に活きてくるあたりも良き。

「神」というのが人にとってなんて都合のいい存在なんだと思うし、逆に時にはなんて厄介で窮屈な存在なんだとも思う。人それぞれ解釈も変わってくるわけで、何を信じるのも自由だけど他人から言われるそれはやっぱりなんか違うよなって個人的には思う。しかしタミーに関して言えばどこか純粋で信仰心にも溢れていて、まぁ総じて、今作はなんとも皮肉めいた内容になってる気がした、というか個人的にはそう見えた。信者にはまた違ったふうに映るのかなどうかな。

そんなこんなで2024年は今作からスタート。今年もいろんな良き映画と巡り会えますように。
竜平

竜平