うまお

青春の殺人者のうまおのネタバレレビュー・内容・結末

青春の殺人者(1976年製作の映画)
3.3

このレビューはネタバレを含みます

冒頭のテロップを観てアートシアターギルド作品かよーと若干萎え。
前に『竜馬暗殺』が全然刺さんなかったのを思い出して。

しかし物語が始まると、カッコいいカット割と、若き水谷豊と原田美枝子の華に引き込まれた。
演技は棒読みチックかもしれないけど、やはり生まれ持ったスペシャルさには何人も敵わないのだなぁと同業者として各の違いを思い知らされた気がした。

市原悦子とのシークエンスは、彼女の鬼気迫る迫力と台詞の内容、情念がまるでシェイクスピア作品を観てるようだった。
これは傑作かも!

と思ったのだけど、後半の逃亡パートがあんまり刺さらなかった。
なんで逃げるのか、結局何を欲してたのかよく分からなかったから。
海辺での回想シーンで、だから刺しちゃったのか、とかは分かるんだけど、ストーリーとしては破綻してる気がした。
70年代と言えばゴリゴリのニューシネマ時代なので、本作もその類なのだろうけど、その割に主人公が何と闘ってるのかが見えづらかった。

原作の小説の概要を調べたら、高度経済成長を必死に生きて得た幸福を踏み躙られたくなかった両親にフォーカスが当たってるようで、個人的にはそっちの方が好みの話だなと思った。

とはいえ、そんな監督はそんな細かいこと考えてない気がした。
クライマックスはガチでセットを燃やして、その炎の中で演技させて、カメラ回してたっていう。
その迫力みたいなものは画面を通してものすごく伝わってきた。
原田美枝子さんは過酷過ぎて今作を一度も観れていないという。そりゃそうだよね、って思う反面。そこまでの狂気で駆け抜けたから創れた作品だし、業界人にファンが多いのもそういうことなんだろう。
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