掛谷拓也

アナザーラウンドの掛谷拓也のレビュー・感想・評価

アナザーラウンド(2020年製作の映画)
3.2
同じ酒の話でもアメリカ人が作れば「ハングオーバー」のようなバカ話になって、デンマーク人が作れば「アナザーラウンド」のような内省をうながす話になる。この映画が面白いのは、血中アルコール濃度を低く一定に保つと生活や人生に好影響があるという仮説を中年の危機に見舞われた4人で検証するという設定。人生、仕事、配偶者や子供との関係の全てに煮詰まり、同じ危機に差し掛かった友人たちと実験を開始する。どれも一旦は好転するように見える。デンマークでは酒類の販売は違法だが、未成年の飲酒は違法ではないそうだ。高校の卒業式で生徒と先生一緒になって港で飲んで踊って大騒ぎなのは面白いが、沖縄の成人式に先生が一緒になって泡盛で泥酔するようなもので日本では考えられない。この国はアルコール中毒だらけよという主人公の妻のセリフもあり、それぞれに4人はアルコールで失敗してしまうが、全体的にアルコールに頼る人の弱さに対する優しい視線とアルコールの楽しさの描写にあふれている。最後の場面も。酒で失敗したことのある人は共感性羞恥で死にたくなる場面があるので注意されたい。断酒してる人も見ない方がいい。翌日映画のことを思い出すと猛烈に飲みたくなる。