10円様

ウルフウォーカーの10円様のレビュー・感想・評価

ウルフウォーカー(2020年製作の映画)
3.7
 みなさん、明けましておめでとうございます🐯🐯
 去年は映画ばかり観てい確かに年でした。今年も絶対にそうなります😅と言うか、映画を観続けられる平穏な生活が続く事を願っています👍

 さて、毎年恒例の年越し映画。今年はこれです!前からどうしても観たかったんですが、鑑賞方法が無くもうApple TVに加入してしまいましたよ。Apple TVはサブスクとしてはNetflixやAmazonには敵わないものの、まだまだ伸び代を感じられるコンテンツで、これから加入しようと思っている方はもう少し待つ事をオススメします😌とは言え、Apple制作の映画が賞レースに顔を出してくるようになり、全てを網羅したい方は即加入でも良いかもしれません😊

 本作はカートゥーンサルーンというアイルランドのアニメ会社が制作しています。今、世界から大注目されている会社ですね。サルーンのアニメは前2作品は観ているのですが、絵本をそのまま映画化したようなタッチは目を見張るところがあります。反面、絵の動きはそれほど活発ではなく、叙情的に物語は進められていましたが、本作「ウルフウォーカー」はかなり躍動感があります。加えて注視したのは背景ですね。シーンによって幻想的だったり無機質だったりとかなり意図した拘りが見受けられました。どうやら版画をモチーフにした描き方をしているとの事。その他、2人の少女が抱き合う時は陰陽の形になるなど、オリエンタルな文化を取り入れているっぽいですね。

 舞台はアイルランドのキルケニー。カートゥーンサルーンはキルケニーにあります。何でもアイルランドの中で狼の伝説があるのはこのキルケニーだけなんだとか。つまりは地方に伝わる御伽噺を映画しているわけです。
 北欧では17世紀頃からオオカミは狩猟されてしまい絶滅危惧種になっていました。しかしアイルランドだけは「ウルフランド」と呼ばれるほど人間とオオカミは共存していたんですね。アイルランドはオオカミを神格化した文化を持っていました。

 もう一つ時代背景を知っておくならオリバークロムウェルのピューリタン革命、その中で行われたアイルランド侵攻ですね。この辺を語ると映画から離れてしまうので止めますが、早い話クロムウェルは現代でもアイルランドではめちゃくちゃ嫌われ者です。そして本作の悪役の護国卿はクロムウェルがモデルです。

 絶対的権力と武力を前にして、人はどう成長できるのか、という主題がありました。メーヴ達狼族は人間に対して、ロビンは父、ビルに対して、ビルは護国卿に対して、それぞれ力で支配されている状況です。ある事をきっかけにその支配から抜けようとします。メーヴは母のため、ロビンはメーヴのため、ビルはロビンのため、これまで禁忌とされていた事に踏ん切りを付けるのですが、その描写一つ一つが丁寧でキャラクター各々を好きになってしまいます。個人的には父ビルの描写が好きで、一兵士としてアイルランド侵攻し、村民を支配する事もとても後ろ向。娘の事ばかり心配し、護国卿にも逆らえません。そんなビルの成長がサイドにあってこそ、少女2人の成長がよりはっきり分かるものとなっていました。

 それだけではありません。
 本作の悪役、護国卿ですが。まあ悪役らしくクズ人間なんですよ。支配層に位置する人間は何に支配されるのか。それは神なんですね。彼もまた崇拝と支配に怯える人間の弱さを見せてくれました。そしてこの人、クズだけど卑劣じゃないし潔いんです。ただのクズなら良かったんですが、彼は為政者、そして武人でした。そんな一筋縄ではいかないキャラクター設定が、この映画の深いところ。
 シスターフッドの映画?いやいや、これは完全に大人が理想と現実の間で本当の道を見つける映画でしたよ。

 という訳で、今年最初のレビューを終わらせたいと思います。
 皆さま今年もよろしくお願いいたします🐺🐅
10円様

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