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UFO真相検証ファイル Part1 戦慄!宇宙人拉致事件の真実のdm10foreverのレビュー・感想・評価

3.4
【信じるものは…】

ね、眠い・・・(笑)。

ナレーションをベースに進んでいく構成なので、仕事帰りの油断した体にはちょっと辛かったかな…。

基本的にこの作品は「いる」という前提で進んでいくんだけど、その割りに、劇中で引用する資料はWikipediaがメインという弱さ。
いや、Wikipediaが悪いと言ってるんじゃないんだよ。
でもさ、ほぼそれだけを根拠に進められても正直「説得力」ってもんがさ…。

この作品の中で真贋を問うのは「アブダクション(誘拐)」。
過去に宇宙人に拐われたと言う人たちの証言について検証を行うというもの。
ま、タイトル通りだけどね。

これらの現象、事件について懐疑派の学者達は、幻覚やイタズラだと言って彼らの証言を信用しようとはしない。
しかし彼ら(証言者)達の人間性については、疑いようのない善人が殆どだったという点では学者たちも認めている。
つまり、金儲けや売名目的で話をでっち上げて話題になってやろうなんてことを考えるような人たちではなく、普段は物静かで地域でも善良な人として親しまれており、ボランティアに参加したり政治に積極的に参加したりと、言ってみれば「イタズラだとすれば、そんなこと考えている暇なんかない人たち」。

更に言えば、彼らはこの体験を世間に公表したことで「ある意味」有名にはなったが、決して金銭的に裕福になったわけではなく、逆に世間の好奇の目に晒されながら生きているという「負」を背負ってしまった人の方が多かったのである。
やがて当然のように彼らは事件の事を公の場では話したがらなくなる。
そうなると、今度は「雲隠れ」と叩かれる・・・負の悪循環。

しかし科学者の中には、どう考えても彼らの言っていることに矛盾がなく、否定することのほうが無理があるとして理解を示す者もいた。

被害者たちが経験したのは「睡眠麻痺」から来る一種の幻覚だとする見解に対しては、アブダクティ(アブダクションされたという人たち)の半数近くの人が昼間に体験していて、決して睡眠中のマヒ状態(いわゆる金縛り)に経験したわけではないし、寝室で起こったケースも勿論あるが、殆どは屋外で起きており、このことからも「睡眠麻痺」による幻覚という説だけでは説明しきれていないと指摘し、懐疑派たちの「否定的見解」をひとつひとつ消していく。

だけど・・・根本的な話をすると、擁護派も懐疑派も含め、いわゆるアブデクティ以外の人間は「見てない」のよ。だから信じようにも「根拠」がないのよ。
確かに、懐疑派の否定は楽だよ。
そもそも、殆どの人が見たことないんだし、従来の科学的な論拠の積み重ねで「科学的に説明できないことはあり得ない」と言ってしまえばそれまでだから。
それに比べて、アブダクティ達は「経験談」「体験談」という、証拠に乏しい話だけで戦わなければならない。ましてや普段プレゼンなんかしないような一般人。
状況的には圧倒的に不利。
この状況で「信じろ」と言われてもね・・・。

でも、これって何も「UFO論議」「幽霊論議」等に限ったことではなく、「圧倒的不利VS圧倒的有利」って実はちょっとした角度のズレから、180度形勢が逆転してしまうってことは、実際の我々の社会でもちょくちょく起きうる事でもある。
つまり、「圧倒的に有利」と見られている条件、状況が崩れ去ったとき、他に当事者を有利に導く根拠がなければ、途端に「丸腰」状態にもなる。
それまで「武器」として使っていた根拠が、今度は自分たちに降りかかってくるのだ。
序盤から攻勢に出れば出るほど、ひっくり返された時のダメージも大きい。

結局、何が言いたいのかというと・・・。
実際のところ、現時点では「地球における科学的根拠」がやや優勢です。
何故なら、圧倒的に「経験者」が少ないから。そして証拠がないから。

でも、もしその「経験者」が表に出てきていないだけだとしたら・・・。
もし、証拠を意図的に隠蔽しているものがいたとしたら・・・。

実際にアメリカ空軍の公式発表でも「殆どのケースは風船や飛行機だった。しかし、数件のケースについては今のとこと説明がつかない。これらについては情報が無いのでアメリカの脅威とはみなしていない」と報告されている。

正体不明だから脅威だとは思わない?なんだそりゃ?
案の定、劇中でも「呆れた」と学者につっこまれてたけど。

こんな感じで「そんなものいない」という多数派側の根拠がぼやけだすと、途端に少数派の「まことしやかな話」が信憑性を帯びてくるから不思議だ。

所詮、「信じるか信じないかは・・」っていう話の域を抜けてないとは思う。
だけど、人が見たこともないものを「信じてしまう」というメカニズムの一端が見えた気がする。
それは、劇中終盤で触れられたフェイクムービーの一件が正にそう。

ある無名の若手映画監督が、とある架空の家族がエイリアンにアブダクションされた様子をホームビデオで偶然撮っていたという体の「モキュメンタリー映画」を作成したところ、数年経って全く本人達の意図しないところで、いかにも本物のように世間に出回ってしまった。
本来であれば作品にはエンドクレジットもあったが、そこも削除され、あたかも本物のように加工されてしまったのだ。
これを見たアメリカの視聴者は「本物だ!」とパニック状態になったという。
後に監督が「あれは自分が撮った映画なんだ」と説明しても「嘘をつくな」と逆に否定されてしまう始末。
人は一旦「信じる」という状況に傾いてしまうと、それを否定する側に傾き直すことが難しくなってしまうという典型例なのかもしれない。

・・・・っていう、「いるの?」「いないの?」っていう部分を煙に撒いてしまうような部分はあったけど、最後まで一応論点がぶれずにやりきってはいた。

ただ、期待していたようなUFO映像などはほぼ皆無。
ひたすらインタビュー映像が延々と続くので、検証と反証という作業が好きな方は観てもいいかも・・。

大槻教授、出番です。
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