たくみ

そこにいた男のたくみのレビュー・感想・評価

そこにいた男(2020年製作の映画)
3.3
新宿ホスト殺人未遂事件から着想を得た作品。
ネットで検索したら今でも事件の写真出てくるけど、当時見た時衝撃でした。
血まみれの人間が横たわってる事よりもこれが普通に世に出てしまうネット社会や平気であげてしまう人が普通にいる事に恐怖を感じた記憶があります。

あらすじとしてはヒモ男がメンヘラちゃんに重めの愛を受け取る感じです。
ヒモ男は役者をしておりショウという芸名で活動している。
そしてドラマの撮影現場で制作会社に勤めているメンヘラちゃん(サキ)と出会う。
その後二人は恋人関係になるが、ショウは自分の素性をあまり話そうとしない。
サキはショウにぞっこんで「この人は私がいないとダメなの」って感じで、貢ぎまくる。
だけどショウは本名を明かそうとしないし過去も話そうとしない事にサキが徐々に不安を覚え始めて、、、という感じ。

自分が愛していた人は他の場所で家庭を持っており、恋人について何も知らなかったが故に犯してしまった罪。
殺人の動機が本当の名前を知った事というのがアブノーマルな感じがして怖かった。
今作のサキはお金を貢ぐことでしかショウとの関係性を持続出来ない。
そういった関係性の時点で一方的な愛情だという事に普通の人なら気づくと思う。
だけど、それに気付けなかったサキの稚拙さは観ていて悲しくなりました。
サキの目先の事しか考えていない感じが短い映画なのに上手く表現されていました。

特に印象に残ったシーンはショウの本名が明らかになるシーン。
ショウ(本名:アイザワゲンタ)が亡くなったと知らされると同時に、サキは名前を知ることになるんですけどサキの感情があまりわからない。
嬉しがるわけでもなく悲しくて泣きだすわけでもない。
サキはショウと過ごした時間しか知らないので、アイザワゲンタが死んだことなんか知ったこっちゃない、私の恋人だったショウはまだ生きていますと感じていたのかなと思った。

あと、ショウが再現ドラマで刃物で刺される役どころを演じている。
その時は刺された後静かに倒れているんだけど、サキに刺された時は対照的に叫びながら藻掻き苦しんでいる。
再現ドラマの現場で「そんな芝居じみた死に方するやつはいない」と言ってたけど、自分が刺された時には皮肉にも自分がしないと思っていたリアクションを取ってしまっている。
このシーンのおかげで何も演技についてわかっていないショウも描けているし、本当に刺されてしまったときは叫びたくなるくらい痛いし辛いというのがこれでもかと言うくらい伝わってきました。
脚本がそれを狙ってやっているのかはわからないけど、個人的にはショウの痛みを上手く表現している良いシーンだなと思いました。

作品のテイストは凄く良かったのですがモザイクは何とかならんかったんやろか、、、
個人的に映画にモザイク出てくると現実に戻されるので好きじゃないです。
モザイクになってしまうならうまく物陰に隠すとかしてほしかったな。

全体を通してショウが愚の骨頂として描かれています。
自分の欲望のままに生きて破滅していく。
まぁ自業自得やんって言えばそれまでなんすけど、人との付き合い方を一歩間違えると誰にでも起きうる事件なんで安易に人の期待を裏切る行動はしない方がいいな、とより一層思わされる映画でした。
30分くらいで見れるので是非。

【その他メモ・独り言】
・プレゼント以外で自分の金で手に入れていない服や車ははたして嬉しいのか。
・運転中はきちんと前を見ましょう。
・ショウの足の毛を足の甲で撫でてるサキが妙にリアルやった。
・唐突に出てくるリスカ跡。衝動的な行動してしまう事の暗示?
・自宅内廊下の出血量、致死量じゃね?
・ラストのハンケツ。
たくみ

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