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アイダよ、何処へ?の猫目のレビュー・感想・評価

アイダよ、何処へ?(2020年製作の映画)
3.6
ボスニア・ヘルツェゴビナ紛争時の「スレブレニツァの虐殺」を描いた作品。
民族浄化という名目のためセルビア人勢力が8000人強のスレブレニツァに住むボスニア・ムスリムの主に男性を殺害した。
虐殺の直接描写や言動もありませんが、人々の行動から出来事を想像させる、とてもお上手な手法。

【ちょこっとネタバレあり】

主人公アイダはスレブレニツァの教師で紛争が起きてからは駐留する国連(オランダ軍)に通訳として雇われている。安全地帯だったはずのスレブレニツァはこの時セルビア勢力にすでに包囲されており、この国連部隊も戦闘部隊ではないので、外部交渉を仰ぐが上手くいかず、孤立を極めていく。攻撃をしかけるセルビア勢力、基地に押し寄せてくるスレブレニツァの住民。国連軍の焦りも伝わります。紛争なのでセルビア側だけが悪という訳ではなく、それぞれの衝突もある。今作はアイダ側から描かれるけれど、国連職員の立場を利用して群衆の中から家族(夫、息子2)のみを救おうと画策する姿が描かれたり、決して善人として描かれていないのが吉。
題名でもある「アイダよ、何処へ」ですが、聖書からの引用句らしくアイダは何処へも行ってません。むしろ、ずっとスレブレニツァにいました。そこで、過去に向き合おとしている、そんなエンディングでした。
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