このレビューはネタバレを含みます
寒気のする映画だった。恐らく拉致されたと思われる娘の、悲痛なメッセージを電話越しに聞かされる母親の姿。子供達がISISに囚われていた際の様子を描いた絵の残酷さ。黒装束の男達の人間とは思えない所業。夜に響く銃声。市民が銃を持ち、夜の闇の中で静かに構える。危険が寄り添う日常。
子供達は毛布にくるまり眠るが、そこに至るまでに、幾度となく叩かれ、足の裏を焼かれた。理由もなく。
闇の中で起こされた男の子アリは、猟師に付き添い対価としての日給5ドルを得る。
整わないインフラ。水浸しの道路。
世界のどこかの風景がとても遠く感じられ、現実のものでありながら現実のものに思えなかった。
日本はまるで、温かなお湯にいれて優しく育てられた赤子のようで、
どうにも感情が定まらなかった。
この今の平穏と幸せを、私はどう受けとれば良いのか。この平和は続いてくれるのか。いつか壊れるのか。
彼らの国に、いつか平和は訪れるのか。
まだこの世には自分の知らない実情があるんだと、語りかけられた映画だった。