Fitzcarraldo

親愛なる同志たちへのFitzcarraldoのレビュー・感想・評価

親愛なる同志たちへ(2020年製作の映画)
3.0
第77回ヴェネチア国際映画祭(2020)審査員特別賞を受賞したAndrei Konchalovsky脚本・監督・製作。

ソ連の血の日曜日
:ノヴォチェルカッスク虐殺事件

ニキータ・フルシチョフ政権によって1950年代後半から1960年代前半に導入された経済・貨幣改革、公式には10分の1のデノミ(10ルーブルが1ルーブルになった)により物価上昇と食糧不足が国中に蔓延する。

1962年6月1日(土)
労働者の不満が高まり南西部の町ノヴォチェルカッスクの国営機関車工場で大規模なストライキが発生して、群衆は五千人を超えて鉄道を封鎖し、工場の管理棟を占拠。

1962年6月2日(日)血の日曜日
戦車と共にソ連軍が暴力的に鎮圧。
KGBのデータによると死者26人、負傷者87人。

発砲事件後間もなく消防車が広場に入り、血痕をすべて洗い流した。

6月3日から4日にかけて240人以上が逮捕された。

裁判はノヴォチェルカスクで1962年8月に一度だけ開かれるも、全国的には非公開。その判決は極めて厳しく、ただ現場に居合わせただけの105人が10~15年の懲役刑を受け、過酷な矯正労働収容所に送られる。

そして7人が銃殺刑に処された。事件が公表されたのは1980年後半になってからで、発砲事件に関わる大半の資料、写真、音声記録は紛失ないし破棄されていたことが明らかとなった。

1990年代後半になってようやく人々が残忍に撃たれた場所が明らかとなったが、彼らの遺体の大半は未だ見つかっていない。ソ連は事実を隠蔽し、史上稀に見るおぞましい事件に関する記憶を葬り去るためにあらゆることをしたのだった。

 当局側の発砲事件の責任者で処罰を受けた者は一人もいない。


これが一連の事件の概要だが…
体質はまるで変わっていない。

やってることは現在のロシアと同じではないか…人間は愚かで同じ過ちをいつまでも繰り返し続けるという暗澹たる事実に気持ちが沈む。


しかし、この日は午前10時の映画祭で"The Godfather Part II"を見てからの二本立てだったので…さすがに脳みそが疲弊してしまい、結局どちらの作品もオーバーヒートして消し去られてしまった。

集中力が続かずに途中、何度か寝落ちてしまう。


Julia Vysotskaya演じる共産党市政委員会のメンバーであるリューダ。

◯川
リューダ、川へ入る。

シームレスに背景がボケていく画作りはとても綺麗。今どきの、人物が手前にいて背景をボカすのではなく、人物を遠めに置いてそこにピントはきてるのだが、背景が奥にいくほど少しずつボケていく。

このショットは本作で1番美しいと思う。
寝ぼけながらも印象に残っている。

さらに対岸の向こうでは、楽しそうに川遊びをしている人たち。馬も一緒に川へ入り水浴びをしている。

リューダが置かれた緊張感と、対岸の優雅に遊んでいる画を対比させるのは面白い。


要所、要所、寝落ちして飛ばしてるので、あまり深く理解はできなかったのがもったいなかったが…


広場の血のりがアスファルトに混ざり落としきれないと部下が報告すると、
「コンクリートを塗り直せ!」
と上からの指示。

証拠隠滅するためにコンクリートを塗り直すという大胆な手口。こんな発想がすんなり出てくる思考回路が恐ろしい。

この国はシステマあるしサンボあるし、やはり敵に回したくない。
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