しらすごはん

親愛なる同志たちへのしらすごはんのレビュー・感想・評価

親愛なる同志たちへ(2020年製作の映画)
3.8

予想していた以上におもしろい映画でした。

史実に基づいた物語です。

1962年、スターリン亡き後、フルシチョフ政権下の旧ソ連の地方都市が舞台。

ロシア南西部ロストフ州ノボチェルカッスクの虐殺事件が描かれています。

ウクライナ侵攻後に、良くも悪くもナイスなタイミングで2022年に日本では公開されました。

ロシアの国策映画かなぁと思って敬遠してましたが、公式ホームページのコンチャロフスキー監督のコメントをみて俄然観たくなりました。

以下コンチャロフスキー監督のコメントです。

「私は、第二次世界大戦を勝利するまで粘り強く戦ったソ連の人々の純粋さを讃え、共産主義の理想と現実の狭間に生じた不協和音を注意深く見つめる映画があってもいいと思った」

「そこで私が目指したのは、ソ連の1960年代という時代を丹念に、細部まで再現することだった」

「私たちの親の世代にはイデオロギー的に厳格な人がたくさんいました。彼らは“自分たちの手で社会を作っていくのだ”というピュアな思いを持っていた。いま振り返ってみると間違っていたかもしれないけれど、当時はある信念を心から信じ、それを追って行動していたのです。私は彼らの行動をジャッジするようなことはしたくありませんでした。すべての人を“人間“として描きたかったのです」

コンチャロフスキー監督作品は、80年代ハリウッド」で撮った『テッドフォール』『暴走機関車』をリアルタイムで観てました。

エンターテイメントとして、レベル高かった記憶あり。


主人公は、共産党員の中年女性リューダ。

リューダは、バリバリの共産党員。

第二次世界大戦中は、最前線で看護師を務め、ノボチェルカッスク市政委員会のメンバーになっている。

物価高騰と食糧不足が蔓延している状況でも、党幹部の特権を使いまくって贅沢品を手に入れていた。

だから、父と18歳の娘の3人で、比較的恵まれた生活をおくれていた。

そんな中、1962年6月1日、ノボチェルカッスクの機関車工場で大規模なストライキが勃発した。

給与カットを通告された労働者たちが、とうとう抗議の意思を表したのだ。

この問題を重大視したフルシチョフ政権は、スト鎮静化のために高官を現地に派遣する。

主人公リューダは、高官相手に、デモの鎮圧を提案する。

そして翌6月2日、戦車とともにソ連軍がノボチェルカッスクに入る。

とうとう、軍による無差別銃撃事件が発生。

非公式では死者約百人、負傷者数十人、処刑者7人、投獄者数百人に達したという。

ところが、主人公の娘がそのデモに参加していたことが分かる。

主人公は弾圧する立場だったのが一転、虐殺現場で行方不明になった娘を探して各所を駆けずり回る。

愛する娘はどこにいるのか、すでに銃撃の犠牲者となってどこかに埋葬されてしまったのか。

主人公がたどる激動の3日間、

必死の捜索の末、3日目に主人公がたどりついた先にあったのは…


モノクロ映像は基本的に観にくい。

ただ、時代感を醸し出すという意味で非常に合ってましたね。

当時のソ連の冷たい白黒の世界とシンクロしてました。

ノボチェルカッスクの事件は、ソ連解体まで30年間隠蔽されていたとのこと。

ノボチェルカッスクはロシア内にあるとはいっても、かつてドン・コサックの首都だったところ。

ウクライナと関係が深い土地。

主人公の父親が、コサック兵の格好していたのもそういう背景があったのですね。

先日のプリコジン反乱時、ワグネルが歓迎ムードになったのも分かるような気がします。
しらすごはん

しらすごはん