あのことばは、ただそれだけで凄まじい力がある。迂闊に使えばものすごくチープなものになってしまう、ものすごく取り扱い注意な言葉だ。でもそれがなんだかすっと入ってきた。これは、今までの是枝監督のドキュメンタリーライクなスタイルでは、たぶん辿り着けなかった境地なんだろうなと思った。
思えば万引き家族から、ありのままを切り取ったようなドキュメンタリーライクなスタイルが完璧に消えて、造られた物語感が際立ったものに変化したと思う。万引き家族の、様々な社会問題や不遇を体現しているような登場人物はあまりに設定を盛りすぎじゃないかと思った。すこし描きたいものが先行しすぎてると思った。
今回も警察の対応とかあれだなと思うところはあった。でもベイビーブローカーはいい方向にフィクショナリティな働いている、というかリアルではないことによってこの映画は素晴らしいものになっていると思った。
その最たるものが観覧車のシーンだ思う。あんなに美しくて、映画的で、エモーショナルなシーンは、今までなかった。ド直球に感動した。そんな良い方向にはたらくフィクショナリティを成立させていたのがソンガンホ他役者達と韓国という場所なんだろうなと思う。日本で同じ内容をやったら、たぶん成立してない。韓国で撮った価値のある映画になっていると思った。
あと想像以上にちゃんとロードムービーで、そこも僕はうれしかった。やっぱりロードムービーっていいよね。
