緑雨

ベイビー・ブローカーの緑雨のレビュー・感想・評価

ベイビー・ブローカー(2022年製作の映画)
3.5
「勝手に産んで勝手に捨てて」
「産んで捨てるより産まずに殺した方が罪が軽いの?」

「一人じゃ何もできなかった」
「一人で全部やろうとしなくていいよ」

「お前を見ていたら自分の母親のことが理解できるようになった」
「許さなくていいのよ」

重くて優しい言葉の遣り取りが印象深い。

是枝こだわりの擬似家族、追跡するペ・ドゥナら警察官も含めて、ロードムービーの中で少しずつ彼らの関係性が深まっていく過程が丁寧に描かれるのが、この映画の最も好いところだろう。

一方で、序盤と終盤の展開はややご都合主義的。ソン・ガンホとカン・ドンウォンにしても、イ・ジウンにしても、罪を犯した(犯している)ことへの自己認識と、共に逃避行に至る動機がうまく表現されていない。終盤ソン・ガンホの娘が出てくるのも唐突感があるし、ラストの行動もわかりにくい上に話を作りすぎていて、取ってつけた感がある。

オープニングは夜、雨の裏通り。中盤の養護施設の場面でも印象的な雨上がりのシーンがあった(雨と傘についてのイ・ジウンとカン・ドンウォンの会話)。韓国の田舎町は、建物の色遣いなどがやはり日本とは少し違っていて妙味に感じられる。

クリーニング店のバンはある意味物語の主役。後部ドアの閉まりがよくない設定はもう一段作劇に活かされるのかと期待していたのだが。パトカーに止められる場面は、なんだかアメリカ映画っぽいなと思いながら観ていたが、こちらも大したサスペンスを生まず。
緑雨

緑雨