スワヒリ亭こゆう

いつかの君にもわかることのスワヒリ亭こゆうのレビュー・感想・評価

いつかの君にもわかること(2020年製作の映画)
4.5
余命僅かな父親が息子を遺して死ぬ前に、里親を探すというお話。
泣かせに来てる感が満載のストーリーですが、子役の男の子が、とても良くてまんまと泣きそうになりました。

主人公のジョンは33歳のシングルファーザー。息子のマイケルはまだ4歳。母親は祖国に帰ったっきり蒸発してしまっている。
それなのにジョンは余命僅か。マイケルを遺して死ぬ運命なのは本人が1番分かっているんです。
彼はマイケルの為にマイケルを大事にしてくれる里親を探すんです。

ジョンとマイケルは実の親子なのかな?って思うぐらい自然ですね。
マイケルは大人しい子供で演技に見えない。本当の親子じゃないと成立しないんじゃないかと思うぐらい自然な父子でした。
その幼い子を遺して死ぬというのが、どれ程ジョンにとって辛く残酷な運命なのかをセリフではなく、表情で見せているのが本作の素晴らしい所です。
説明台詞は一切無い。それでもジョンの焦りと不安と苛立ちが見えてくる。それをマイケルに勘付かれない様にしている。ジョンは自分が死んだ事はマイケルに告げないでくれと言うんです。
まだ幼い子供に母親がいなくなり、父親まで死んだと知ったら辛くなってしまうと思うんです。何ならマイケルが自分の存在を忘れ里親を本当の親だと思う様にさせて欲しいとまで思ってる。
この辺りも泣かせますよね。

里親探しをするに連れてマイケルも何となく死というものが分かってくる。この辺りのニュアンスをはっきりとは描かない。だけど父親が死んだ後のマイケルを想像が出来る様な演出になっているんですね。
非常に優秀な監督と役者さんだと思います。
本作の良さが伝わる人には伝わるし、さっぱり分からない人もいると思います。
でも、それぐらいさり気ない端々に想いが伝わるニュアンスを散りばめて想像を掻き立てるぐらいの映画の方がやっぱり僕は観てて楽しい。
で、楽しんだ後に哀しみが伝わってくるという素晴らしい作品だと思いますよ。

こういう映画は映画館で観るのが一番なのは間違いないんですけど、改めてお家で見返したい作品ですね。
ほんの少しだけ誰かに優しくなれる、そんな作品でした。