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荒れ地のCHEBUNBUNのレビュー・感想・評価

荒れ地(2020年製作の映画)
2.6
【イランのある終焉】
アッバス・キアロスタミのワークショップで修行したアフマッド・バーラミの『THE WASTELAND』はタル・ベーラのような人の心に広がる荒野を捉えている。氷のレンガを運ぶ男。地方にある工場は、静かである。そこで働く人は多様であり、ペルシャ語、トルコ語、クルド語が入り乱れる。そんなレンガ工場を切り盛りするロットフォラは工場を閉鎖することを決意する。これにより、均衡を保っていた人間関係に綻びが生じ、崩壊していく。皆、この工場を出ていかないといけないのだが、そうそう簡単に出ていけないのだ。それを一つずつ彼は解決していく。その厄介な調整と、レンガ造りの工程を退避させて行き、そこへ「レンガは儲からない」という視点を加えることにより、疲弊するイランの人種間問題を浮き彫りにさせている。

長回しで、荒野を捉えていく。もはや魅力を失った土地というものを強調する必要があるのだが、本作はいかんせんショットが美しすぎて、土地が魅力的に映ってしまっている問題があります。また、英語字幕だと非常に分かりにくいイランのローカルな問題を地味な演出で描いているため、私の勉強不足でなかなか飲み込み辛い問題がありました。

個人的に、『NOWHERE SPECIAL』に受賞して欲しかったのですが、この小さな物語を受賞させるところにコロナ禍におけるヴェネツィア国際映画祭の意地を感じました。果たして東京国際映画祭で上映されるのだろうか。
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