いち麦

あの夏のルカのいち麦のレビュー・感想・評価

あの夏のルカ(2021年製作の映画)
3.0
キャラクターたちがみんな表情豊か。造形も結構好みで特にジュリアが生き生きとしていて魅力に感じた。声当てした福島香々の声質が合っていたのもあると思う。背景はイタリアの港町の感じが窺われ趣があった。ちょっぴり感傷的なエンディングにも好感。邦題からもその感触が伝わってくる。

陸へ上がったルカとアルベルトは事あるごとに水濡れして何度もシー・モンスターである正体がバレそうになる。素の自分を集団の中で隠し通すことの難しさや力を出し切って自己実現するためには自分を曝け出すことが必要なのだと訴えているようだ。
一方で、マイノリティを受け入れる社会に寛容性が必要であることの描写は、港町ポルトロッソで僅かにジュリアの父親に変容が見られるだけとなっている。バランスが悪い。物語の幕引きが終盤で余りに駆け足になっていたのも悔しい。今流行りのテーマだけにもっと丁寧に描いて欲しかった。
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