バリカタ

凱歌のバリカタのレビュー・感想・評価

凱歌(2020年製作の映画)
4.0
凱歌、勝って歌うもの。英題を直訳すると
「勝利の歌」
なぜこの題名?異質な感じを持って鑑賞。

本作品は不当な差別、扱い、偏見を乗り越えてきた元ハンセン病患者のご夫婦のドキュメント。また、本作は不当な扱いの中でも最も人間の尊厳を傷つけるであろう、断種にフォーカスしています。
過去を明らかにし世の中にアピールすることを目的にした作品ではないかな?って思います。

断種に関しての当事者の方々の話は聞くに耐えません。克明な手術の様子や実行してた医師達の発言、行動などが話されます。
あまりに残酷な過去です。

人としての存在意義、いや存在自体を否定されてきたハンセン病を患った方々は、
打ち負かされて、叩きのめされ、社会から抹殺されてきたのでしょう、息を潜め身を潜めざるを得なかったのでしょう。

山内さん夫婦はその中でも、許される権利を行使し、穴の空いたココロを埋める
努力をし、周辺の理解者の方々の助けもあり、すごい境地に達します。
精神的な境地に。

国や周囲、場合によっては家族からも存在意義を否定される中、
自ら存在意義をつかみとる、ゆえに行動に移せるのでしょう。
ゆるぎないその意思は伝播し、現代の同病者の光となり支えとなる。

まさに礎となっています。
山内さんご夫婦のケースはまれでしょう。
それが叶わなかった方々も含め、今の礎となっていると思います。
だからこそ同症状の19歳の子には笑顔がある。
辛い事も沢山あるだろうけど、笑顔がある。
自身の将来を考え、悩む19歳がそこにいる。

将来を奪われた方々が礎となり、
「あなたには将来があるのよ!」と強く背中を押す。

礎になりえたのは、人間扱いされず、存在意義を否定されながらも
人間の尊厳を諦めず人間として生きようとした人のまさに
「勝ち得た」ことなんだろう。

ゆえに「凱歌」なのだろうか?

演出としては、関係者のインタビューが長回しでそのまま入ってる。
故に、直に話を聞いている気になる。空気まで伝わってくる、
「手触り」を感じる映像であった。

自分自身、強く、強く、、、ありたいと心底思った。