菩薩

私は決して泣かないの菩薩のレビュー・感想・評価

私は決して泣かない(2020年製作の映画)
3.9
ポーランド映画らしい冷めた温度と乾いた質感が非常に良い。ミドルネームも知らないくらい関係が希薄だった父が出稼ぎ先で死んだ、その弔いの為、死体を引き取る為に遥々アイルランドへと向かう娘。おそらく大した思い出もないのであろう父親との唯一の繋がりは金、そして免許を取ったら車を買ってもらえると言う約束。自由経済圏の中での賃金格差や移民労働者が抱える厳しい環境なども背景に据えつつ、淡々と娘ちゃんの奮闘が描かれていく。その過程で少しずつ浮かび上がる亡き父の肖像、悲しみや寂しさは強がりの奥に押し込めそれでも信じたい「愛されていた」筈の証拠としての金、それを巡る彼女の決断が潔いし、ラストシーンがもうグッと来ちゃってやられる。現実は厳しいながらもなんだかんだと優しい大人達。
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