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ドライブ・マイ・カーのZUSHIOのレビュー・感想・評価

ドライブ・マイ・カー(2021年製作の映画)
5.0
生粋の自称ハルキストだが、これまで何本も映画化されてきた村上春樹原作の中でも(殆どが良い映画だが)、最も村上春樹の一貫したテーマを捉えて、より明晰にした映像化作品だったと思う。
例えば短編集『女のいない男たち』の一貫したテーマは、「絶対的(に理解不能)な他者性」だったわけだが、そのテーマはこの作品の「バベル」的な多言語ワーニャ伯父さんよってより強調されているし、渡利みさきの故郷でのエピソードもまた(中頓別町のクレームによりはからずも)『羊をめぐる冒険』の上十二滝村の深淵部での鼠との邂逅を連想させるし、そもそもの原作からそうだが高槻君は『ダンス・ダンス・ダンス』の五反田君そのもので、出来れば愛車はマセラティにしておいて欲しかった。
春樹作品の長編を読み終えた後のような、僅かな希望を感じさせるラストシーンも素晴らしい。
これは、アカデミー賞脚色賞は堅いにしても、ひょっとすると作品賞もあり得ない話ではないとすら思った傑作だった。
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