ジュリアン

ドライブ・マイ・カーのジュリアンのレビュー・感想・評価

ドライブ・マイ・カー(2021年製作の映画)
5.0
自分の周囲に批判的な人が多かったのに反して普通に良かった。批判している人は夏目漱石と言ったら近代的自我みたいな脊髄反射のように類型的な村上春樹批判をしているんかなと敬遠したくらいには。良い時は変奏といい、教条的に気に食わない時は捨象・脱臭化と言うなんて容認しがたい。

チェーホフで多言語劇をするというポリフォニー性・他者性・モノローグ性の拡張が良かった。チェーホフらしい噛み合わないセリフや断ち切れるコミュニケーション、根底にある現実の歪さ、ナンセンスさが噛み合っていた。

なんか見ていて自分は親の離婚や諸々のことをちゃんと消化できていなかったんやなと少しメンブレしつつ、だからこそワーニャ叔父さんよりも新しい生活!と言える桜の園が好きだったんだなと自覚した。新しい生活と言いたいし、この哀愁ありつつもカラッとした前向きさに求心力があるので願望を投影していたのかもしれない。