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岬のマヨイガのBuffysMovieのレビュー・感想・評価

岬のマヨイガ(2021年製作の映画)
2.9
戦争や災害によって、家族を失ったり、問題を抱えている者同士が肩を寄せ合い、擬似貴族のように生活を共にするようになっていく映画やドラマというのは、数多くある中で、近年は特にそういった「人と人との繋がり」を見つめ直すような作品が増えてきている。

ハンガリーの映画『この世界に残されて』でも、ホロコーストから生き延びた者たちが心の隙間を埋め合おうとする様子が描かれていたし、『護られなかった者たちへ』や『そして、バトンを渡された』など、今後公開される作品の中でも描かれていた。

血の繋がりだけではなく、他人同士でも支え合うことはできて、それがいつしか「家族」になり得るという大きなサイクルを描くことは、逆に人と人との繋がりを断ち切りながらも、経済的や精神的には繋がりが必要という両極端の中にあるこのコロナ禍に生きる人々の目には、どう映るのだろうか。

今回は東日本大震災と東北や関東に伝わる「迷い家」がベースになっていることもあり、岩手県が舞台となっているものの、日本の神話や妖怪、宗教的な象徴というものは共通して、ルーツを紐解いていくと、何か大きな問題に立ち向かうための心のより所だったり、教訓によるものが作りだしたものだったりする。

それらが「マヨイガ」を通して入り混じる独特の世界観は、「日本」という国が築いてきた伝統と歴史のメタファーのようにも感じられるのと同時に、人々の悲しみや絶望感が大きな巨悪となって立ちふさがるといった点でも、岩手の限定的なフィールドではなくて、「日本」そのものが舞台であるようにも感じた。

今回、脚本を務めたのは、多くのテレビや映画のアニメを手掛けた吉田玲子ではあるが、宗教色の強いものから、一般向けの作品まで幅広く手掛けていることもあって、今回も少し間違うと宗教色が強かったり、説教臭くなるところが、絶妙なバランスのファンタジーに仕上っている。

線の数が少ないシンプルなキャラクターの作画に関しては、好き嫌いが分かれるかもしれないが、やわらかいタッチの分、背景や自然、特に「緑」の使い方がよく映えているようでもある。
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