MasaichiYaguchi

愛について語るときにイケダの語ることのMasaichiYaguchiのレビュー・感想・評価

3.8
四肢軟骨無形成症の池田英彦さんの初監督、初主演作で、障害を持った者のリアルな性愛を描いた彼の遺作は、障害者や難病を題材にしてはいるが、従来、この手のジャンルのイメージを払拭して、「愛すること」とは、「生きるということ」とは何かを我々に問い掛けているような気がする。
近年、障害者を主人公に性をテーマにした映画というと、邦画では、リリー・フランキーさんが実在する身体障害者の男性を、清野菜名さんが精神障害のある女性を演じ、二人の恋愛模様や性愛について深く踏み込んだ「パーフェクト・レボリューション」があり、洋画では、重度身体障害者の性愛事情をリアルに描くアメリカ映画で「セッションズ」がある。
「障害」「性愛」「死」というトリプルな“タブー”を取り上げた作品は暗く、重いものが多いが、コビト症で、更にスキルス性胃がんステージ4の余命2カ月を宣告された池田さんは、恰も開き直ったかのように自らを被写体として、それも女性とのセックスをカメラに収める“ハメ撮り”を映画として遺そうというバイタリティーが凄いと思う。
そして何と言っても、映画には池田さんのポップで軽妙な魅力や、その人柄が醸し出す笑いが溢れている。
このようにポジティブな池田さんだが、時にその“素”が垣間見えることがある。
その“素”からは、「人を愛するということがわからない」「うまく人を愛せない」という悩みや葛藤が伝わってくる。
人を愛することに関する悩みは、別に障害者だけでなく誰しもが経験することだと思う。
本作が今までの“タブー”を打ち破って、これだけ多くの共感を得たのは、こういった池田さんのキャラクターと作品が持つ普遍性のような気がする。