あやうい関係、絶妙のバランス
海辺にある親と離れて暮らす児童養護施設の子供たちの物語
メインとなるのは一番年嵩の高校生・花と新たに施設にやって来た晴海との関係なのだが、これが友達なのか姉妹なのか、母娘なのか、未来の自分と過去の自分なのか、どれでもあってどれでもないという何とも名付けようのない間柄である
このどっちに転ぶか分からない関係を、ふたりが親といられない理由を絡めながらどっちつかずのままラストまで導くストーリー運びが素晴らしい
一方で背景となる鹿児島・阿久根のロケーションやそこで営まれる子供たちの暮らしの描写は演出の手を感じさせず主筋とは対照的な穏やかさで、静かさのなかに緊張感を同居させるバランスの良さをみせる
花と晴海が親と離れている時間、親を待つ時間を金魚や施設に植えられた樹で重層的に視覚化するアイデアも見事だった
長編デビュー作ながら表現や情報の出し入れの自在さを感じる作品だと思った
監督・小川紗良と主演・小川未祐は覚えておかないと