むぅ

ハウス・オブ・グッチのむぅのレビュー・感想・評価

ハウス・オブ・グッチ(2021年製作の映画)
3.8
その欲求、混ぜるな危険!

個人的にはもう三大欲求に、承認欲求を追加して四大欲求でいいんじゃないかとさえ思っている。

フィレンツェで設立され、現代のファッションブランドの元祖と呼ばれるGUCCI。
グッチ一族の後継者の一人であるマウリツィオと結婚したパトリツィア。彼女が手に入れたかったものは一体何なのか。
ブランド成功の陰にあるグッチ一族の衝撃の実話を基に、華麗なる一族の真実が明らかになっていく。

レディー・ガガ演じるパトリツィアの狂気のグラデーションが凄まじい。
愛と権力、所有欲と承認欲求がからまり合いパトリツィアの眼に狂気が宿る。

パーティーで出会ったマウリツィオがグッチの人間だと知った時のパトリツィアの「ふぅん」という、相手への興味の第一歩が面白い。

「数合わせなら最初からそう言って下さいよ!」
同期たちと屋形船飲み会するからむぅも来るか?と、もう社会人になった先輩から連絡をもらった大学生の夏休み。
二つ返事で同期と2人「ふーねっ♪さーけっ♪」とるんるん待ち合わせ場所に向かった。
そこに揃うは、
有名企業に就職された先輩方15名
(全員知ってる)
ばっちりオシャレした女性13名
(全員知らない)

「(ひょえー!)」
声にならない悲鳴であった。
「お名刺ちょうだい出来ますか?」
というささやきが飛び交う中、
「なんで屋形船って天ぷらなんだろうねー」
と言いながら同期と2人しこたま飲んで食べる事になった。
今なら胸焼けするのは大量の天ぷらの方だが、当時は横で繰り広げられる水面下の戦いに胸焼けであった。
「ここの会計はいいから」
とご馳走して下さろうとする方に
「当たり前だ!」
と言ったのは人生でこの1回のみ。
しかも奇しくも先輩の手に握られていた財布はGUCCIであった。

カップル成立しなかったその屋形船合コンと違い、確実にマウリツィオを落としたパトリツィア。
お見事!と思うが、そこに純粋な"恋"もあったと私は思う。

果たしてその狂気はどこから始まったのか。
彼女が欲しかったのは愛なのか権力なのか、それとも。

スイカに塩をかけるみたいに、人の不幸をスパイスに自分の幸せを際立たせるのは醜い。
けれども、こういう作品で"野次馬根性"を落ち着かせるのは一つの手かもしれないとも思わせる作品。

アル・パチーノがお皿を洗う姿が可愛く、癒されてしまった。
むぅ

むぅ