掛谷拓也

モーリタニアン 黒塗りの記録の掛谷拓也のレビュー・感想・評価

3.8
ザ・レポートにもあったが911以降のアメリカ政府機関のテロ再発防止の名を借りた人権侵害の告発。実話に基づく。ビンラディンとの関係を疑われた主人公が突然アフリカのモーリタニアの自宅からCIAに連れ去られ、アフガニスタンの米軍基地経由で、キューバのグアンタナモ収容所に送られる。そこで行われるラムズフェルド主導のテロ対策という強化尋問法というのが全く非人道的で酷い。証拠不十分なため罪状も決まらず、裁判も行われないまま拘禁され続ける主人公。それを助ける人権派弁護士にジョディ・フォスター。タクシードライバーの少女娼婦が白髪の弁護士とは。ニューメキシコ州アルバカーキの事務所ということだが、無料弁護=プロボノの権利が事務所によって認められているという制度は知らなかった。こういう告発本が出版され有名俳優によって映画化されるのがアメリカの強みと思える。副題の黒塗りどうこうというのは政府の情報開示範囲の狭さは洋の東西を問わないという印象付けだろうが、文書が残っているだけアメリカの方が国として優れている。情報公開制度の筋金が違う。フィルマークスのカテゴリーにスリラーとあるがスリラーではない。