てづか

1秒先の彼女のてづかのレビュー・感想・評価

1秒先の彼女(2020年製作の映画)
5.0
結論から言って、すげー好きな映画だった。

前半はシャオチーの目線ですすむ。1秒先取りの設定も楽しかったけど、モテない女が騙される流れも、変なラジオのDJも、不思議なヤモリの夢のくだりも。すごく明るくて楽しかったのに父親の件とかヤモリの話でも、ちょっとだけザワつく箇所があったりする。

グアタイが出てきてから更に面白くなった。
今度はワンテンポ遅い設定。好きな子をずっと見守ってきたんだなというのがよく分かる。
でも、彼のターンで特に好きだったのは…リウ先生に騙されてたほかの女の子の身内がバスの中でリウ先生を脅迫するシーン。
「姉貴は暴力が嫌いだからな。でも、俺は大好きなんだよ!!!」で爆笑してしまった。ひどいこと言うじゃんと思って笑ってしまった。

そこから時間が止まって。
時間が止まった世界で起こることもすごく滑稽だけども可愛らしくて、人のパン食べたり痴漢の顔に新聞紙押し付けたり自転車かっぱらって乗ってる人横たえちゃったり。
なんかずっと楽しくて笑ってたんだけど、あの海に向かうまでの道中の美しさでハッとさせられ。
バスが海に浮かんでるみたいなあの光景の美しさで泣きそうになったりもした。

そしてあのタイムラグの真相がどんどん明かされて、観てるこっちはだんだん状況がわかってくる。

個々にあった出来事が、だんだん交わりあって繋がって、ひとつの物語になっていく。

最後にあの郵便局で、彼の姿がうっすら映った瞬間に涙がたくさん溢れてきて、なんだかほんと良かったねと思えた。会いたい気持ちが溢れた瞬間。あのシーンがいちばん好き。


タイムラグを設定だけにとどまらせず、それによってどんな影響が出るか。それによってふたりの関係はどう変わっていくのか。あるいは、その中でも変わらない思いはなにか、っていうのをちゃんと表現してるからこんなに感動できたのかな?


人より1秒遅い人の利息が溜まっていくなら、人より1秒早い人はどうなる?というところも自分は少し想像してしまった。
それがあるからお父さんは戻れなかったのかな、とか。お母さんも早い人っぽかったから、だから大事にされてないと思ってしまったのかな。
きっと、早い人のお金は人知れず減っていってる。そうすると、ああいう見てくれてる人のことも見過ごしてしまう。だから結局は自分を大事にしましょうねということなのかなと。

あとは、誰にも愛されてないと思ってても自分が自分であっただけで気づかないうちに誰かしらに思われているかもね、みたいなあの感じも前向きで良い。

エンドロールも素朴でよかった。

とにかく、あの郵便局のシーンだけでも大好きだと思った。
面白かった。
てづか

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