ぼのご

1秒先の彼女のぼのごのレビュー・感想・評価

1秒先の彼女(2020年製作の映画)
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なんかチェン・ユーシュン監督の他の作品観ていても思ったけど、登場人物のほとんどが社会でうまくいってなさそうで、自分が混ざっていても違和感ないような雰囲気だから観ていて居心地が良い笑
でも皆一生懸命で悲壮感はあまり無いし、暗くないんだけど押し付けがましい明るさがないのがまた好き。

ラジオ聴いてて顔にモザイクがかかったDJが目の前に登場したり、好きな相手が空想で現れたり、夢でヤモリの化身が出てきてなくし物についての暗示があったり、現実と夢や空想の混ざり具合が不思議な雰囲気で楽しかった。悲惨なことはけっこう起きているのに、それでも希望があって無理なく笑える場面も少なくないから、観ていて嬉しくなる。

シャオチーはなんでもワンテンポ早いけど、要領が良いわけでは全くなくて大変そう。それでもひたむきな様子が可愛かった。でも悪い人は不器用な人をめざとく見つけるものだなぁ。結婚詐欺師が一瞬でシャオチーに目をつけ接近してくる流れはリアルな感じした。実際どうか知らないけど笑

ワンテンポ遅いグアタイのパートに入って、視点がより多面的になっていく構成も面白かった。人より1秒遅かったことによる利息として世界中の時が一日止まって、やっと本当に自分のペースで行動したり考え事を出来たりしている感じが泣ける。遅いとマイペースに見られるかもしれないけど、好きで遅いわけじゃないから周りの早さに焦っちゃうし、本当は全然マイペースでなんかいられないんだよね。それから「このままだと変態になってしまう」って自分で気がついて、「ありがとう、さようなら」を言えたのがえらい。変態にはもうなってたけど笑

バスで海に向かう途中の場面とか、美しい風景が沢山あった。こういう美しい風景を時間を気にせずに眺めることが出来たら素敵だし、友達でも恋人や家族でも、隣に好きな人が居たら最高だな。シャオチーもグアタイも、お互いに巡り逢えて本当に良かったねぇ。

序盤で示される
「自分を愛そう。誰も愛してくれないから」
というような文章が最後
「自分を愛そう。誰かが愛してくれているから」
に変わっていて、それまでの映画の中の道のりもあって目が潤んだ。良い映画だった。あと豆花食べたくなった笑
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