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アポロンの地獄のmanacのレビュー・感想・評価

アポロンの地獄(1967年製作の映画)
1.5
オイディプスがしょっちゅうヒステリックに怒鳴り散らしているので鬱陶しい。
確かに彼の生い立ちは悲劇的ではあったけれど、自分の予言聞く前からなんか好戦的なところあったし、元々この人アドレナリン放出しまくりな人だったんじゃなかろうか。

音楽が怖い。
日本の雅楽みたいなので暗い曲がしょっちゅうかかる。スケキヨ出てきそうなおどろおどろしさ。88年『AKIRA』でガムランとか使ってるのを観たときは「この時代にこんな音楽使うなんてなんて前衛的♡」とか思ってたくせに、自分の価値観ってちょっと自分勝手だなと思いつつも、やっぱり古代ギリシャに雅楽は受け入れられない。『AKIRA』は未来を描いているのだ。過去を描いているオイディプスとは違うんだ。

演出が独特。
最初と最後が現代(1960年代?)。オイディプスが過去の人物として終わった物語として現代が描かれるのではなく、登場人物がそのまま現代に過去の物語の引き続きとして描かれている。現代に生まれた子が、突然舞台が古代になってその子が捨てられている。国を出た古代のオイディプスが唐突にポロシャツ着て現代で笛吹きながら彷徨っている。
どう肯定的に捉えてもめちゃくちゃおかしいんだけど、なぜか自然と受け入れられてしまった。


ところで、そもそもの元凶は予言だったと思うのだけれど。
ライオス王は予言を聞いて生まれた子を捨てた。
オイディプスは予言を聞いて親殺しをしないように親元を離れた。
その結果、実の親だと知らずに父親を殺め、母と交わってしまったわけだ。
ライオスの元で育っていたらどうなったかは未知だが、少なくとも養父ポリュボスの下で育ったオイディプスは親殺しを良しとはしていないのだから、予言を聞かなければそのまま実の親を知ることもなく、幸せにコリントスで暮らしていたのではないだろうか?実の親を知っていればライオスを殺めることもなかったのではないだろうか?
全ては予言が招いたことで、本当に避けられない運命だったのか。
オイディプスのセリフに「意志だった、運命ではない」ってあったけど、そのセリフの意味ってこのことじゃないの。
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