竜平

アクアマン/失われた王国の竜平のレビュー・感想・評価

アクアマン/失われた王国(2023年製作の映画)
3.9
「DC・エクステンデッド・ユニバース」第15弾、にして『アクアマン』の続編。家庭を持ち一児の父にもなったアクアマンこと「アーサー・カリー」のもとに過去の因縁と、ある「失われた王国」にまつわる新たな問題が、という話。ジェームズ・ワンによるトンデモ系アクションアドベンチャー。

2013年の『マン・オブ・スティール』から始まったこの通称「DCEU」というユニバース、なんやかんやあって(いや本当にいろんなことがあったなとしみじみ…)大幅刷新が決まり、今作で敢えなく終了、というか打ち切り。泣いても笑ってもこのシリーズはこれで最後。今作はそんなDCEUのこれまでの繋がりを加味しつつのストーリー、なんてことはなく、アクアマン単独作の続編としてのストーリーに徹してる印象。良くもわるくも「最後」っぽさは微塵もない、ってゆー。とりあえず1作目『アクアマン』だけは予習必須かなと。前作でアトランティス帝国の王になり、いつの間にかパパにもなってたアーサー。演じるジェイソン・モモアの、ワイルドだけど愛嬌があり、また強いけどたまにドジも踏む、そんなコメディ色が全編に冴え渡る。更にジェームズ・ワンの手腕と言うべき相変わらずのテンポ感とメリハリの効いた展開が終始飽きさせないし、ダイナミックなCGによる豪快なアクションシーン、トンデモ合戦模様など視覚的にも楽しめる。海底の未知の世界や、そこでの様々な生物、これなんか前作以上にたくさん出てきてどっか地球じゃない惑星かと見紛うようなトンデモ具合、いやいい意味でね。

映像的な楽しさのみで中身空っぽかと言うとそんなことはなく、むしろ期待してたよりもずっと人間ドラマ、ならぬ海底人ドラマがあったように思う。前作からそのまま登場する人物それぞれの関係性、細かい人間模様が蔑ろにされてなくて良き。ここらへんも続編として何気にグッとくるところ。で海底人と地上人の問題から、兄弟、そして家族の物語に落とし込んでいくあたりも見事。いや本当に、こーゆーところしっかりしてるとアクション映画が「ただの」にならなくていいよね、深みが増すよね、なんて。アンバー・ハード、ドルフ・ラングレン、ニコール・キッドマン、『ザ・フラッシュ』にもしれっと出てきたアーサーの父役のテムエラ・モリソンなど前作から続投。前作の敵役でアーサーの義弟であるパトリック・ウィルソン扮する「オーム」が今回はおもしろい役どころ。更に通称「ブラックマンタ」がヴィランとして再登場する他、前作でちょい役だったシン博士もわりと活躍。今回は目立った新キャラがいなくて、周知のキャラのみで展開していくあたりも続編として上手く作用してる気がする。散らからずにスッキリ。ウィレム・デフォーが今回出演してないのだけちょい残念かな。てかアンバー・ハードのセリフが極端に少ない気がしたんだけどこれはやっぱりあの裁判問題に起因してるのか、ただの気のせいか。主要キャラだし出演シーンは結構あるんだけど、なんかあんま喋んないってゆー。


正直そこまで期待もせず、軽い感じで鑑賞。思いのほか、というか、DCEUはやっぱ単体としての出来がいいんだよなと実感、一本の作品としてちゃんと「着地」してくれる。前作を見返して思い出したんだけど、前作のラストが「1、2、3、ダァーー!」(言ってはいないけど動作が完全に) の猪木締めだったもんで、今回もそれをちょっとだけ期待してしまった、ってのは本当にどうでもいい話ごめん。ということで終わってしまったDCEU。シリーズとしてストーリーが完結しないままなのがなんとも残念、なんだけど、これまでたくさん楽しませてもらったし夢をもらったし、本当にありがとうと言いたい。打ち切りってつらいね。今作で最後と言ってるけども、全体のストーリーとしては『ザ・フラッシュ』で歴史改変があって、そこからの『ブルービートル』と今作はそのまま次に引き継がれるんじゃないのか、とか、あとキャスト変わらず製作が決まってるドラマ『ピースメイカー』や「アマンダ・ウォラー」関係の作品はどーゆー扱いになるのか、とか、まだよくわかってないことがたくさん。何はともあれジェームズ・ガンとピーター・サフランによる新たなシリーズ、通称「DC・ユニバース(DCU)」に大いに期待。続報を気長に待つとする。長くなっちゃったーおしまい。
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